プリ小説

第5話

いちごのケーキ
缶コーヒーの件でなんだ山田っていいやつじゃん。



と少しでも思いかけていた自分をぶん殴ってやりたい気分。




私の手を引きながら歩く奴の後ろ姿を



見つめてバレないように小さな溜息を漏らした。




「なああなた」


『なに』




そんな時ふい山田から名前を呼ばれて



条件反射のような返事を返すと、




「お前腹空いてないか?」

『へ、』




ぐいぐいと引っ張っていた手を開放して



私の顔をじっと見てそう聞いてくる山田。



な、なんなんだ急に。



まあ、正直夕御飯まだ食べてないし



空腹って聞かれたらそうかもしれない。





『ま、まあ空いてるけど』




戸惑いながら山田の質問そう答えると奴はやけにいい笑顔で




「じゃあケーキ食わね?」と言ってきたのである。




クリスマスだしさ、なんて言いつつ今度はある場所を指差す山田。




ふと指差す方に視線をやってみると、





『山田…いまケーキ食べたいって言ったよね』


「おう」







『あのさ山田…ここコンビニだよ』





私と山田の目の前にあったのはイルミネーションのキレイなお店なんかじゃなく




普段行きなれたクリスマスムードなんて皆無のコンビニで。




おいおい冗談でしょ。



自分から無理やり誘っといてこれですか。





私は引きつった顔を隠すことなく山田の顔をじっと見つめた。





「ばっかお前。いまのコンビニのデザート舐めたら痛い目みんぞ」




いや、うん。そうじゃなくてね。





私の言葉に真っ直ぐな目でそう言い返してくる山田に軽く目眩がした。




確かに今のコンビニで売られてるデザートって美味しい事は認める。




だけどさ、なんかこう違うじゃない。



『いや、だからなんでクリスマスにアンタと私がコンビニでデザート買って食べなきゃいけないのかって言ってんだけど』



「なんでってそりゃ俺が苺のケーキ食いたいからに決まってんだろ」



『じゃあコンビニじゃなくて他にもあんじゃんか』



言うてしまえば私がさっきまでチラシ配ってた所はケーキ屋だぞ。



そこで買えば良かったじゃん。なんて言ってやると山田は食いぎみで、



「だってお前んとこファミリーサイズしか売ってないだろ」



だからそう言う問題じゃないと思うんです。



意味が分からないと頭を抱える私を余所に




山田はまた私の手を引いて目の前にあるコンビニへと歩みを進めたのである。



ああ、本当に今日はクリスマスなのについてない。

シェア&お気に入りしよう!

この作品をお気に入りに追加して、更新通知を受け取ろう!

ぷうちゃん
ぷうちゃん
好きなものをお話しに。 楽しいと思ってもらえたらなによりです。