明るさに目が眩みながらゆっくりと瞼を明け、
横を見やる。
窓から差し込む光に照らされた君は、
瞼を固く閉じていて。
「朝だよ・・・まだ起きないの?」
なんて、意味の無い台詞を口にする。
そっと触れた頬は、すっかり冷たくなっていて。
青白くなった綺麗な顔は、
朝日に照らされて輝いている。
「・・・起きてよ。ねぇ、今は君達の時間でしょ」
何度呼びかけても、返答もなく。
あの暖かい陽だまりのような声が、
無性に恋しくなって。
眩しくて仕方ないからカーテンを閉めようとしたけど、その眩しささえも君みたいで。
いつまで経っても、君は戻ってこなくて。
俺の中は、ずっと真っ暗で。
いつもは嫌いな朝が恋しくなって。
夜みたいに真っ黒なピアノの前に座っては、
今日も弾き始める。
好きだったよね、姫。この曲。
君みたいにあったかくて優しいメロディを奏でていると、あの時君が歌ってくれた歌声が蘇ってくるみたいで。
ここずっと、この曲ばっかり。
眠りの森に攫われて。
帰ってこない君を想って。
君の眠りに、せめてもの冥福を祈ろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。