第14話

姫を亡くした騎士は【朔間凛月】
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2020/09/19 07:56
明るさに目が眩みながらゆっくりと瞼を明け、
横を見やる。


窓から差し込む光に照らされた君は、
瞼を固く閉じていて。


「朝だよ・・・まだ起きないの?」



なんて、意味の無い台詞を口にする。



そっと触れた頬は、すっかり冷たくなっていて。

青白くなった綺麗な顔は、
朝日に照らされて輝いている。


「・・・起きてよ。ねぇ、今は君達の時間でしょ」


何度呼びかけても、返答もなく。

あの暖かい陽だまりのような声が、
無性に恋しくなって。


眩しくて仕方ないからカーテンを閉めようとしたけど、その眩しささえも君みたいで。



いつまで経っても、君は戻ってこなくて。



俺の中は、ずっと真っ暗で。

いつもは嫌いな朝が恋しくなって。



夜みたいに真っ黒なピアノの前に座っては、
今日も弾き始める。


好きだったよね、姫。この曲。


君みたいにあったかくて優しいメロディを奏でていると、あの時君が歌ってくれた歌声が蘇ってくるみたいで。


ここずっと、この曲ばっかり。




眠りの森に攫われて。
帰ってこない君を想って。




君の眠りに、せめてもの冥福を祈ろうか。

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