ハサミが好き。
あの独特な形とか、指にフィットする心地良さとか、チョキチョキとした愉快な音とか。
🐿『髪長くなったね』
🐿『切ってあげる』
そう言って、僕はハサミで君の髪の毛を切り落とす。
じょきっ、ばらばらっ…………
「も、……やめて、」
髪の毛や新聞紙が散乱した部屋で、君は僕を恐れるんだ。
君はハサミが嫌い?
「ここから出して…」
ううん、だめ。
君と僕の関係はどんなハサミでも切れないよ。
🐿『大丈夫』
🐿『あなたはショートカットが良く似合うよ』
あなたの髪。あなたの服。あなたの周りの男。
全部切ってあげたから。
🐿『あなた』
🐿『言うこと聞かないと、あなたの身体で1番大事な血管も切っちゃうよ』
そう言ったら、君は素直に僕に従ってくれる。
君は僕のものになってくれる。
こんな何の変哲もない、ハサミひとつで。
だから、僕はハサミが好き。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。