第32話

社不
1,572
2023/02/20 13:39










夕方、6時を回ったところ。



エレベーターで3階に上がり、
1番奥の部屋。



🐻『………ただいま。』


「……おかえりなさい」


ドアを開けると、その子は制服を着て
玄関に立っていた。
 

🐻『今日は、行けた?』

靴を脱ぎながら聞くと、
泣きそうな顔でその子は首を振った。


「……着替えてみたんだけど。
バッグ持って、靴履いてドアノブに触れた瞬間…」



そこまで言うと、その子は手で顔を覆った。


🐻『…そっか。泣かないで』

「……私、もうわかんないよ。
なんでこうなるのかも、どうしたらいいのかも…」
🐻『大丈夫、いつか絶対よくなるから』
🐻『今日はシチューにするからさ。
また手伝ってくれる?』
そう言うと、その子は涙を拭いて頷いた。


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あの子は、僕の彼女。
1歳年下で、今は高校三年生。
高校の時に委員会で知り合って、
卒業式の日に僕から告白した。
明るくて、活発で、元気な子だった。
でもある日、大雨の中、傘もささずに
びしょ濡れで帰ってきた。
話を聞くと、クラスの友達に突然無視を決め込まれ、
誰も相手してくれなくなったという。

彼女に心当たりは無く、つい前日まで
その友達と一緒に帰っていたくらいなのに。
女の気替わりは恐ろしい、と思った。
その日から、彼女は学校に行かなくなった。

…というより、行けなくなった。
学校に行こうとするとお腹が異常に痛んだり、
足が動かなくなったり、
無理して出ようとすると意識を失ったこともあった。


彼女はそんな自分の事を責めた。

「みんな普通に学校に行ってるのに、
私はどうして行けないんだろう」


「クラスでのことなんて、気にしなくていいって
わかってるのに、身体が動かない」
「毎日先生から電話がかかってくる。
日が経つにつれて、先生も私のことを
煙たがってるように感じるの」



「…………そりゃそうだよね、
私、社会不適合者だもん」


🐻『………社会がなんだ。適さないからなんだよ。』


そう言って、震える声で彼女を叱った。
🐻『生きてるだけで……生きてるだけでいい。』
🐻『いつか絶対、外に出られるようになるし
普通に戻るから。』





🐻『だから、………………』







🐻『お願いだから、死なないで……………』





気がついたら、彼女は

集中治療室にいた。





『飛び降りですって……』
『住んでたアパートから……』
『彼氏さんが大学に行っている間に…』

『高校では、あまり友達がいなかったみたい』
『だってあの子……………』












『社不だったんでしょ?』

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