第36話

おいしい
1,505
2023/04/16 09:08
 









恋人が死んだ。



不慮の事故だった。


僕の恋人、ボムギュ。


明るくて、声がでかくて、いたずらっ子で、
それでいて繊細で考え事の多い子だった。
彼と同棲していた僕は、仕事に行く彼を見送ったあと
僕も在宅での仕事をこなしていた。
すると、お昼をすぎたあたりに
スマホに非通知表示の電話がかかってきた。
恐る恐る電話に出ると、


『そちら、チェ・スビンさんのお電話で
間違いないでしょうか?』
と、慌てた様子の女の人の声。
🐰『そ、…そうです、けど』

『落ち着いて聞いてください。』
『あなたの恋人のボムギュさんが、
事故に遭われて意識不明の重体です』



頭が真っ白になった。

気がついたら、仕事も何もかも忘れ、
スマホだけ持って病院に向かっていた。


でも、着いた頃には。



『ご臨終です』





🐰『あ……あ……………』

真っ白なベッドに横たわった彼。
そして、1本線が引かれた心電図。



『トラックに撥ねられたという事で、
こちらに搬送された時には…もう……』


そう気の毒そうに説明を終えると、
医者は病室を出ていった。


そこから先のことは、あまり覚えていない。




今僕は、彼の葬式に来ている。


『では、納骨のお時間です。』


そう言うと、焼けて骨になったボムギュが出てきた。


ちっちゃいな。骨だけだとこんなに小さいのか。
でも、綺麗な骨。

トラックに右半身を突っ込まれ、右側は
ボロボロだった。
対して、左側は綺麗に残っていた。

皆が泣きながら箸で骨を摘んで行く中、

僕はこっそり、左手の薬指の骨を抜き取った。

そして、ポケットに入れて、そのまま
何事も無かったかのように振舞った。



ボムギュの、骨。


本当は誰にも触らせたくなかった。
だからせめて、左手の薬指の骨だけは
僕だけのものなんだ。


葬式が終わって、家に帰って
ポケットから骨を出した。




そうだ。




一緒になればいい。




🐰『ボムギュの好きな……そうだ、カレーにしよう』

すぐに冷蔵庫にあった食材を漁って、
カレーのルーをコンビニで買い、
鍋に火をつけた。


野菜を切って、きちんと煮て、
ルーを入れて……


🐰『ボムギュ』


ぽと、とボムギュの骨を落とした。



ぐつぐつ、ぐつぐつと煮えていく鍋。
骨が沈んでいく。


きちんと混ぜて。
ごりっ、ごりっ…と、骨を砕いていく。


それから、何分かして、カレーは出来上がった。


炊いておいたご飯にカレーをかけると、




🐰『いただきます、ボムギュ』


甘くて美味しい。







美味しいよ、ボムギュ。

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