全人口のほとんどが個性持ちとなった現代。
街では敵による犯罪も多く起きている。
街中で敵に遭遇することももはや珍しいことではない。
散歩していると、
また敵が出たようで、叫び声が聞こえてくる。
声が上がった方を見ると、大きな敵が女性に覆い被さろうとしている所だった。
そう思っていると、ヒーローが駆けつけてきたらしい。
早くきてくれてよかった、そう思って私はまた歩き出す。
すると、
後ろを見ると、さっきの敵が私の方へ走ってきていた。
周りから悲鳴が聞こえてくる。
私は敵の攻撃をよけて、持っていた傘を敵に突き刺す。
敵はうめき声をあげて地面に倒れ込んだ。
私の個性は「空間移動」。空間浮遊や短距離の瞬間移動ができる個性。
いま敵の攻撃をよけたときに、とっさにその瞬間移動を使ったのだ。
いっせいに周りの視線が自分に集まるのを感じる。
私はそう言うと、顔を見られないようにその場から走り出した。
いま私は16歳だが、高校には通っていない。
小さいときに親に捨てられてから、親戚の家に住まわせてもらっていたが、そこも中学校を卒業したときに追い出されてしまった。
いまはバイトを掛け持ちしたり日雇いの仕事をしたりして生活している。
個性は持っているが、ヒーローになりたいとは思わない。というか現実的に無理だろう。
なにせヒーロー科の高校はお金がかかる、私にそんなお金はない。
目立たないように適当に生きていけばいい。
個性は身を守るために必要だったら使えばいい。
それだけでいい。
ずっとそう思っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。