それは 思いがけない出会いだった 。
あなた「 今日も桜綺麗だなぁ… 」
今 , わたしの目の前には , 麗らかな日差しを受けて満開に咲く桜の木 。
まるで生き物の集大成みたいで , すごく力強くて , 美しい 。
…これは , 写真に収めなくては 。
そう思いながらスマホを取り出した時 。
??「 どいてくれぇええええ!!!! 」
あなた「 え 」
物凄く大きな声が聞こえた方に目を向けた時には , 私の目線は傾いていた 。
そのまま , 大きな音と共に倒れ込む 。
鈍い痛みを覚悟した 。
…が , いつまで経ってもその痛みは来ず 。
恐る恐る目を開けると , そこには見覚えのあるあの顔 。
クラスメイトの天馬だった 。
司「 す , すまん!! 大丈夫か…!?! 」
そういう天馬の顔は真っ青で , でも辛うじて頭だけは守ってくれたんだと気づく 。
あなた「 …いや , わたしも周り見ないで立ち止まってたし , ごめん 」
そう謝ると , 天馬はうるさいくらいの声量で ,
司「 いや!! 佐倉は断じて悪くない!!!!本当にすまんかった … !!! 」
と言った 。
あなた「 うるさ … じゃなくて , わたしは大丈夫だから 」
司「 そう言われても , 女子の顔に傷など付けてしまっては , 男として最低だからな … , 怪我してないか ?? 」
そう言って , わたしの頬を撫でる彼 。
その姿が , 妙に魅力的で 。
不覚にも , わたしの心はとくんと鳴った 。
あなた「 だ , だだだ大丈夫だから !! とりあえず離れよ!? 」
司「 あ , ああ , すまない … !! 」
そう言って , 彼はあたふたしながら私から離れる 。
司「 …とりあえず , 何かできる範囲でさせてくれないか … ?? でないとオレの気が済まん… 」
しょぼんと項垂れる天馬に , わたしは頷くしか無かった 。
あなた「 う , 分かった , 分かったから … 」
司「 !!ありがとう!! 」
そう言って , 彼は私の手を取り上下にぶんぶんと振る 。
ああだめだ 。
どうやらわたしは , 春の麗らかな魔法にかかってしまったらしい 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。