どんな本にも , こんな展開への対処法なんて書いてないんですけど 。
あなた「 あ , この本返し忘れてた … !! 」
放課後 , 机の奥底に詰め込んだままだった本を見て , おもむろにそう叫ぶわたし 。
つい先日 , 司書の先生から本を返すようにと言われてたんだった … !!
急いで返しに行かなければ … !!
そう思い , わたしは本を抱えて教室を出る 。
幸い , 教室には誰も居なかった為 , 急いで机に足をぶつけてしまったわたしを見たものは居ないだろう 。
あなた「 失礼します… 」
そう小声で言い , 図書室へと侵入する 。
… 先生は居ないみたい … ??
そう気を緩めた時 ,
??「 あなた先輩?? 」
と , 誰かが後ろから声を掛けてきた 。
あなた「 うひゃ!? …って , 冬弥くんか… !! びっくりしたぁ… 」
思いもしなかった後輩の登場に , 変な悲鳴を上げてしまう 。
そんなわたしを , 彼は不思議そうに見つめていた 。
冬弥「 何か , 先生に用事でもありましたか?? 」
あなた「 あ , いや違うの!! むしろバレたら怒られるというかなんというか … 」
わたしがモゴモゴ口ごもっていると , 冬弥くんは ああ , と納得の声を漏らす 。
冬弥「 本 , 期間内に返し忘れたんですね 」
あなた「 そういうこと!! …あ , じゃあ冬弥くん , 1つお願いされて貰ってもいいかな? 」
冬弥「 ??はい , なんですか?? 」
そう言って首を縦に振ってくれる後輩くん 。
その純粋な優しさに , わたしは甘えてしまった 。
あなた「 あのね , 先生に見つからないようにこの本返しててくれないかなぁ … 図書委員権限で … !! 」
冬弥「 ああ , そういう事なら任せてください。大好きな先輩の為なら 」
珍しく微笑んで言う彼の言葉に , わたしはん? と違和感を覚える 。
あなた「 『 大好き 』…?? …ふふ , 冬弥くん可愛い~ ! わたしも大好きだよ ~ !! 」
あなた「 まあとりあえず , 本ありがとう!! また今度 , 何か奢らせて… 」
冬弥くんの頭を , 背伸びしてなでなでした後 , 図書室を去ろうと背を向ける 。
… 帰ろうとしたのだ 。
しかし , それは彼によって止められた 。
冬弥「 待ってください , 先輩 」
あなた「 冬弥くん? どうしたの?? 」
冬弥「 大好きって … 本当ですか 」
あなた「 え 」
驚いて彼の顔を見ると , 彼はいつになく真剣な目でこちらを見ていた 。
冬弥「 …俺は , 恋愛的な意味で言ったんですよ 」
私の手を取り , そういう彼 。
あなた「 えっ… 」
体の内側から , 熱が登っていく 。
冬弥「 あなた先輩は , どうなんですか 」
あなた「 ぅ , 」
こんな甘い経験 , どうしろってんだ 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。