その日は卒業式だった。
みんながお別れの言葉を交わしている中、
私は当時の彼に別れを切り出された。
"好きな人が出来た"
そして彼は去っていった
私は彼との思い出がたくさん詰まっている
この校舎から少しでも遠くに行きたくて、
友だちとの思い出を語ることも無く、
学校を後にした。
私は満開の桜の並木の道に来た。
ここも彼と通った道。
どこに行ったって彼との思い出が溢れてくる。
思い出がない場所なんてこの街にない。
それぐらい彼とすごした日々は私にとって大切な時間だった
彼が好きになった人は学校1の美人と呼ばれている、女の子だった。
私は1人静かに涙が枯れるまで泣いた
たくさんの人が哀れみの目で見ているのを知っていても涙が止まらなかった。
そんな私の気持ちとは裏腹に桜は私にこの世界の輝きを見せつけるかのように綺麗に咲きほこっていた。
何時間泣いていたか分からない。
もう夕日が沈もうとしているとき、
誰かに声をかけられた。
みんな無視して私がいないかのような
素振りをしていた中、
彼だけは私を見つけて、話しかけてくれたんだ。
すごく優しい声だった。
顔をあげてみると、柔らかい笑顔をした
男の人がたっていた。
なんで私なんかに話しかけるんだろう?
そう言ってその人は私の涙を拭ってくれた
そういうと涙がまた出てきてしまった
それからその人はたくさん私に話をしてくれた。
面白い話や、私が知らなかった話、びっくりするような話など、どれも新鮮で涙なんていつの間にかなくなっていた。
そして、日が沈んでしまった頃
そして、次の日も、その次の日も、その人とたくさんの話をした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。