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第10話

10.想定外
何か、これ以上聞いてはいけない気がするから、話を逸らそうと話題を探した

「ぶ、文化祭!どう?」


「へ?」


唐突に出た言葉がこれだった
おかげで彼女は頭にはてなマークが浮かべている様子だ


「文化祭の準備、どのクラスも、そろそろじゃないかなって、思って」


「あっなるほど
私のクラスももう準備始めてますよ」


「そっか、何やるの?」


「劇やります
神崎くんのクラスは?」


「僕のクラスは、まだ、いろいろ揉めてるところ、なんだよね
もう、何でもいいのに
正直、どうでもいいって思ってる」


「よかった……」


「何が?」


「私も文化祭とか、そういうクラスで何かを成し遂げる行事みたいなもの、もうなんでもいいからみたいな考え方で」


「そっか、同じだね」


「別に嫌いっていう訳でもないんです
ただ、そこで揉めたりして、時間を使ったり、関係がギスギスしたりするのがすごく嫌で」


「うん。確かに」


「それも思い出の1つなのかも知れないし、大人数で1つの目標に進むにあたって、逃れられないことなのかも知れないけど
私には、もうそんな余裕はないし、疲れるだけだし、これ以上悩みとか不安とかストレスとか増やしたくないから!…………あ」

彼女の話し方はどんどんヒートアップしていき、最後の方は小さい叫びのようなものに変わっていた
声量は控えめであったが、確かな怒りを彼女の声から感じた

そして、我に返ったのか、罪悪感と後悔が混ざり合ったような複雑な表情をしていた



だから、彼女を安心させたかった


「大丈夫。僕も、同じ考えを持ってるし、そういう、気持ち、何度も抱いたこと、あるから」


「いいですよ、私のこと軽蔑しても」


「思うわけないよ」

何も考えず、反射的に応えた
むしろ、前よりももっと彼女に惹かれている自分がいるように思う

見開いたままの彼女の瞳は少し潤んでいた




「分かって、くれるんですか?」


「うん」


「ありがとう、ございます。
こんなにポロポロと言葉が出てきてしまうなんて思ってなくて
ただ、なんて言うのかな……この人なら大丈夫みたいな安心感、があったから」


「僕もだよ。ありがとう」

たくさんの気持ちを込めて感謝を告げた







ガラガラ

図書室の先生が戻ってきた

つまり、もうこの部屋が閉まる時間ということだ



僕は彼女が勧めてくれた本を借りた

今まで本を読まずに生きてきた人間が昨日と今日とで借りた2冊の本を読み切るまでにどれくらいの時間が必要なのだろうかと不安にも思ったが、返却期間内には必ず読み終えることを誓った





カバンを手に取り、二人で図書室を出る

校門までを歩く間、彼女とは外がだいぶ暗くなってきたねとか寒くなってきたねとかいうような、他愛もない話をした










「では、また明日です」


「うん。また、また明日」

そう言って、それぞれの方向に歩いていく



またねっていう言葉より、もっとしっかりと約束された、また明日という言葉を君はくれた

僕は、一瞬、躊躇してしまったけれど、きちんと明日も会えるということを表明した







帰り道を歩きながら、今日あったことを思い出す


僕が想像していたのは彼女が紹介してくれた本を読みながら図書室が閉まるまでの間を過ごすことだった

だから、てっきりそう思い込んでいた僕は、話題をふられたとき、驚いた



思っていたよりも話が弾み、思っていたよりも彼女が本心を言葉にしてくれた気がする

自分と同じように安心感というものを彼女が僕に対して感じてくれていたということが驚きであり嬉しくもあった






とにかく、想定外な1日で僕はそれがとても新鮮だった



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ñon🌙
ñon🌙
こんにちは🌙未熟者ですがよろしくお願いします ・第20回プリコン作品 「冷えた心に温もりを」引き続き連載中 ・お題チャレンジ中の作品 「私、タピオカに興味ないので」連載中 ・第21回プリコン参加中 「次、生まれ変わるときは たった1人の存在に」 主にプリコンとお題チャレンジに沿った作品制作をすると思われます 更新速度は、あまりいいとは言えませんが、読んで頂けると嬉しいです(*>_<*)ノ
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