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第5話

5.同じ場所
どうしてだろう

今まで人と関わることを避けてきた
面倒くさかったから
興味なんてなかったから

100%の愛嬌で近づかれたとしても、優しさを極限まで表したような言葉を投げかけられたとしても
僕の心は1ミリも動くことはなかったし、これからもそんなことは起こらないだろうと思っていた

だって、全部作り物なんでしょう

そういう冷めた考えしか持っていなかったから






それなのに、そんな僕が素直に挨拶を返して、名前を名乗る
おまけに自然と微笑むような真似をしてしまうとは考えてもみなかった

何がそうさせたのかは自分でも分からない






見つめ合ったまま沈黙が流れる

少ししてどちらからともなく図書室内を歩きだした










本棚に並ぶ背表紙を1冊1冊慎重に見ていて気付いた

世の中には何かを伝えるために、ある事柄を通して、作品を書き連ねていく人達がいる

そんな人達の思いが詰まった本たちがこんなにも存在する

そのことに気づいた僕は、感動を覚えた







そして、きっと彼女は、ずっと前からここを知っていて、ここに居て、たくさんの世界に触れてきたのだろう

不覚にもゆっくりと本棚に沿って歩く彼女を目で追った

彼女の横顔は言葉に表せないような神秘で包まれていた










目を離すことができず、しばらく見つめていたようで、そんな僕の視線に気づいた彼女はこちらを振り向いてしまった

気まずい、どうしよう、そんな焦りが高まっていったが、そんな心配は御無用で
彼女は何も問わず、何も聞かずにふわりと微笑むだけだった










周りは、こんなにも静かなやりとりをどう思うのだろうか

つまらないとでも思うのだろうか

意味わからないとでも言うのだろうか

別にそう思われたてもいい

言われたっていい










だって、彼女はどこか違う気がするから、他の人と










高校に入学したばかりのことを思い出す

「愛してる」

「愛してる」

「愛し、て、る?あー!やっぱもう無理!」

「あ、こいつ照れてる!」

「うちらもやってみようよー、愛してるゲーム!」

キャーキャーキャーキャー キャーキャーキャーキャー

(何が愛してるだよ、本気でそんなこと思ってるわけでもねぇのによく言えるよな)

「ねーえ!好きな人教えてよー」

「えー、どうしよっかなー?」

「じゃあさ、私も教えるから!ね、お願い!」

「うーん、いいよ!だれだれー」

ワイワイガヤガヤ ワイワイガヤガヤ

怜(好きな人ってそんな簡単に教えるもんなのかよ)

「なぁ、あいつ可愛くね?」

「あーそれな分かる」

「でもスタイルで言ったらあっちが1番だよな」

「あぁ確かに、胸でけぇしな」

「ちょ、やめろよお前ー!」

ニヤニヤニヤニヤ ニヤニヤニヤニヤ 

怜(そこしか見てねぇのかよ、キモ)











あの頃の僕は嫌でも聞こえてくる不謹慎な会話に心の中でツッコミを入れていた

でも今じゃ、そんなことを言う元気も気力もないし、相手にする価値もないと分かったので、息を潜めることだけに集中して生活してきた



もちろん今もそれは変わらないし、あの教室は居心地が悪く息苦しい










でも僕は今、息をしている

とても居心地の良い場所にいるから



そして、彼女もそんな僕と同じ場所にいる

たとえ、1割程度だとしても、僕側の人間に近い部分があるのかもしれない
そんな希望が生まれていた


少なくともすごく遠い場所にはいない気がする










本棚に向かって、立ち尽くしたまま、小さな喜びを噛み締めていた










その時、彼女がこちらを振り向いた

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ñon🌙
ñon🌙
こんにちは🌙未熟者ですがよろしくお願いします ・第20回プリコン作品 「冷えた心に温もりを」引き続き連載中 ・お題チャレンジ中の作品 「私、タピオカに興味ないので」連載中 ・第21回プリコン参加中 「次、生まれ変わるときは たった1人の存在に」 主にプリコンとお題チャレンジに沿った作品制作をすると思われます 更新速度は、あまりいいとは言えませんが、読んで頂けると嬉しいです(*>_<*)ノ
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