私は異性への耐性がそんなにないんです、とコップを片手に言ったが、隣の彼は口角を上げるだけだった。
余裕そうで腹が立つ。
今更だなその質問。
初めてあったときから今この瞬間まで、胸がうるさくなかったときなど一度もなかったんですが。
つっ?
ここでなんで?と聞き返せる自信がすごくて困惑した。
本当に不思議そうに聞かれたから私も一瞬なんでだろう?と本気で思ってしまった。ああ、自信のあるイケメンって世界が違うな。
そんな世界が違うイケメンと私が二人で手を繋いで歩いているところを想像してみる。
うん、なんか違う。
釣り合わないから、ファンの人が怖いから、お兄ちゃんが嫌がりそうだから、何となく出てきた理由の全部が周りに影響されていることにそこで初めて気づいた。
首を縦に振る。治くんは満足そうに笑った。
え、なんのポーズ???それ。
半ば強引に水を奪い取られ、気づいたら逞しい胸元にいた。
うちの洗剤の匂いと、少しだけ、二人で相合傘したときに嗅いだ治くんの匂いがした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。