お兄ちゃんと治くんの反対を押し切り、私がリビングのソファーで寝ることになった。
治くんには私の部屋で我慢してもらう。
おやすみ、と二人は電気を消して寝静まった。
兄以外の人がひとつ屋根の下で寝ていると思うと不思議な感覚で、あまり寝付けなかった。
パチ。
キッチンの方の電気が付いた気がしてぼんやりと目を開ける。
お母さんが帰ってきたのかもしれない。
おかえり、と言いたいのに寝ぼけた舌っ足らずな声しか出せない。寝起きの人間ほど雑魚な種族はいないのだ。
ほとんど開いていないであろう目はそのままに、ふるふると首を横に振る。
目の前の人はくすくすと笑った。そこで気づいた。あ、これお母さんじゃない。
可愛かったから許すわ、とさらっと私の寝癖を撫でながら治くんはまた笑った。
イケメンすぎてしんだ。
立ち上がろうとして体が傾く。慌てて彼が支えてくれた。間一髪。
治くんは顔に手を当てて大きくため息を吐いた。呆れられてしまった。すみませんなんか。お恥ずかしい。
ドバババババ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。