第19話

少しずつ
662
2019/08/31 04:57
その後、僕は初めて体育の授業に参加した。

特に運動が得意なわけではないので、目立った活躍はなかったけれど、郁人とキャッチボールしたり、ミニゲームでライトに来たフライをキャッチしてアウトにしたり。
クラスメイトの男子
ナイスー!!
周りからの声に、僕はボールが収まったグローブを笑顔で上にあげた。




郁人
いい感じじゃん
椅子の背に頬杖をついて僕を見る郁人が口の端を緩める。

僕は人目を気にすることなく笑顔になって言った。
凛雨
うん。郁人のおかげだよ。フード脱げって言ってくれてありがとう
郁人
いーよ。あの時はマジで殴ってやろうかと思ったけど
凛雨
い、いやそれは……!ごめん……!
郁人
冗談。ちゃんと次の日やったし。パーカー着てこなかったのもすげぇと思ったよ
……うん。僕も、何回も迷った。

フードを被らないでいるのはやっぱり怖いし、何かあった時にすぐまた隠せるようにしたいって。

だけど、隠してしまったら“僕”は何も変わらない。


仁菜のそばに、い続けられない。

凛雨
目標があるから、頑張れてる感じかな
郁人
……ふーん
凛雨
な、何その顔
郁人
別に
「別に」なことないと思うんだけど……郁人の表情から呆れを通り越した何かを感じるよ。

ふと、一人で黒板を消す日直の子の姿が目に入った。

前は『僕なんかが』って、絶対行けなかったけど__
凛雨
手伝うよ
クラスメイトの女子
あ、ありがとう!
僕は微笑を返して、チョークの文字を黒板消しで消していった。

プリ小説オーディオドラマ