すぐそばから郁人の声がした。
最後まで聞こうとせずに郁人は言った。
突き放すような冷たい声音。
女子グループはまもなく、僕たちの元から離れていったようだった。
ドカッと椅子に座る音と吐き出されたため息につい肩を震わせてしまうと、「あ、お前じゃねぇからな。さっきの女子どもだよ」と言われた。
口にするのは、改めて実感することだった。
僕は泣きそうなのを必死に堪えて言った。
言葉が足りていないことは分かっていたけれど、きちんと説明できるほど僕の精神は強くなかった。
どうしよう、いじめられる、女みたいって言われる____嫌な想像ばかりが頭の中を廻って、他のことなんて何も考えられない。
どうしよう、どうしよう__
驚きのあまり、負の感情が全て吹き飛んで僕はただ郁人を見つめた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。