第24話

守るために
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2019/09/01 05:17
凛雨
……仁菜を、怖がらせないでください
僕は後ろにいる仁菜をちらりと見てから、正面に向き直り、先輩を見る。

目の前に出てみると思った通り先輩はすごく怖くて、背も高くて、僕なんか簡単にボコボコにできそうだった。

だけどせめて、気持ちでは負けないように。
先輩
あ?
不快そうな声を発する先輩の目を、真っ直ぐ、強く見つめる。

怖いって感情を悟られたら終わりだ。さっきの状況に逆戻りしてしまう。

大丈夫。この人は仁菜を壁に追い詰めたけど乱暴してなかったし、ここで僕を殴って退かすとか、そういう悪い人ではない。多分。

ただ、弱気なところさえ見せなければ諦めてくれる……気がする。
先輩
…………
凛雨
…………
絶対、逸らさない。


フッと先輩の口元が緩んだ。

凛雨
わっ……
急にわしゃわしゃっと頭を撫でられて、訳が分からないまま髪を押さえて先輩を見上げる。

先輩は今までの空気が嘘のように、強面の顔に陽気な笑みを浮かべていた。
先輩
かっけえじゃん。大切にしろよ
凛雨
……は、はい
とりあえず返事をすると、先輩はズボンのポケットに手を入れて歩き去っていった。

……な、何今の……。助かった、のかな?
仁菜
……凛雨
後ろから服の裾をくいっと引かれて、はっとして仁菜を振り返る。
仁菜
ありがとう
ふわりと優しい笑顔が咲く。

幸福な感情が身体中に満ちて、浮き立つような感覚の中で笑い返した。
凛雨
ううん
__無我夢中だったけど、やってよかった。
仁菜
いきなり前に来たからびっくりした。近くにいたの?
凛雨
うん……近くにいた、かな
仁菜
しどろもどろになる僕に、仁菜が首を傾げる。

告白かと焦って捜して覗き見して結果的に仁菜を助けた……なんて、言えるわけない。


何を思ったか、仁菜の表情が明るくなり、僕を褒め始めた。
仁菜
本当すごかった凛雨。あんなに怖い先輩相手に一歩も引かなくて!かっこよかった
凛雨
……仁菜もいつもかっこよかったよ
一気に心拍数が上がって落ち着かなくなって、零れるように出てきたのはそれだった。

いつか言いたくて胸に秘めてきたことが、この一言を皮切りにすらすら出てくる。
凛雨
いつも助けてくれて、周りに流されたりせずに自分を持ってて、みんなに優しくて。仁菜みたいになれたらって何回も思った。勝手に憧れてました
えへへ、と例によって変な照れ笑いをしてしまい、なんでもっとましな笑い方ができないんだと自分を責めた。


仁菜が小さな小さな声で呟いた。
仁菜
……私は、凛雨にそんな風に言ってもらえる資格なんて……
なんて言ったか上手く聞き取れなくて「仁菜?」と尋ねると、仁菜は哀しげに微笑んだ。

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