第4話

三色スミレ:
1,629
2018/02/12 11:50
三色スミレ:あなただけが私の思いを独占している

「愛乃~おはよ~」

私と愛乃は同じ塾に通っていて、今日は朝から授業だった

憂鬱以外の何物でもなかったけど、愛乃に会えるのが嬉しくて、

大嫌いな英語をこれからやるというのに満面の笑みが溢れるくらいには機嫌が良かった


「あ、柚~今日ごめん一緒に帰れないかも」
「…どうしたの?」

謝る愛乃の隣に知らない女の子が立っているのを見て、嫌な予感がした

「今日から学校の友達が塾に通うことになって、友達がいる時は一緒に帰れなくなると思う」

表情に隠しきれていない雲がかかる

絶対私と帰らないといけないわけでも、
その自由を奪う権利もない

わかってる、わがままを言えない、
素直に了承をしないと、って

それでも私以外の知らない女の子と二人で帰ると思うだけで嫌になる自分を抑え切れなかった


「…そっか、わかった、」

私は一言だけそう答えると、

なるべくその子に嫌われないようにしないと、と思い笑顔を向けた

「こんにちは」

その子は少しだけ口角を上げて、
明らかなる作り笑顔で、
女の子にしては少し低めの声色に短い言葉を乗せた

「あ、どうも」

その瞬間に何故か、
私はこの子と仲良くできないんだろうと悟ったのだった

挨拶したもののどうすればいいのだろうと思った直後、
その子は愛乃の腕を掴み、笑顔を見せた


「愛乃、早くあっち行こう」

なんだ、笑うんじゃん、
さっきの作り物の嫌らしい笑みじゃなくて

「あ、有華待って、ごめんね柚また明日ね」

来たばかりなのに『また明日』という言葉を聞くなんて

『有華』

そう呼ばれた女の子がどんな子は知らない

いい子なのかもしれない、多分面白い子なのだろう

愛乃があれだけ高校で仲良く出来るということはいつも一緒にいる子なのだろう

愛乃の友達に悪い奴なんていないだろう

でも、そんな理屈なんて抜きで
常識なんて置いておいて


私はあの子が好きじゃない
私はあの子が許せない

私は、愛乃と自分が一番仲がいいと気取ってる人が好きじゃない

私が愛乃の一番なんだ

その独占欲が心の中で渦を巻いて苦しくなった

どんどん黒くなる、
どんどん愛乃で心が埋まっていく


___ああ、

後戻りができないほど、
私は愛乃を好きになったのだと自覚した

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