第3話

桃の花:あなたの虜です
1,980
2018/02/12 11:46

「愛乃~!待った?ごめん!」

あの時から何も私達の関係は変わっていない


そりゃそうだよね、

私は隠してこの子は気づいてないのだから

気づかせない、絶対
そうじゃないと、私達の関係は…


「ねぇねぇ写真撮ってるんだからこっち見てよ愛乃~」
「え~めんどくさい、ご飯冷めるよ」

こんな二人が好きなんだ、

私がデレデレでこの子は素っ気なくて

でもお互いが、
『好き』同士でこれでいいんだ


私の好きが変わっても、
好きなのに変わりはないから、
この二人の関係を、愛乃の笑顔を失うわけにはいかない

毎日楽しいのは愛乃がいるからなのだ


だから、私は…

「ねぇねぇ愛乃~」

今までの接し方を私は忘れてしまった

完全に愛乃を見る目が変わってしまったのだ

だから、ごめんね、
いやらしい気持ちとかはないんだよ


寄り添って手を繋ぐ私、

少し驚いてから、
軽く笑って何事もないかのように過ごす愛乃


胸を高鳴らせるのは私だけなのだと

そう感じる瞬間、私は寂しくなった

愛乃に、何も望んでないはずなのに
今までと同じ生活で十分幸せなのに


愛乃と一緒にでかけた日は、いつも私が家まで送り届ける

心配もあるけど

少しでも一緒にいたいから、だなんてこのこは知る由もないのだろう


「愛乃、帰ったらまた連絡する」
「うん、待ってる~」

ばいばい、と手を振って背中を向け
家に入ろうとした瞬間

私の足は、手は、勝手に動いていた

何も考えていなかった
どうなるかなんて考えていなかった

ただ、私はほんの少しだけ残っていた理性を働かせ、唇ではなく、


___頬に軽くキスをした


確かに感触があって
確かに体温があって
確かに愛乃は目を丸くさせていた

慌てて誤魔化そうとしたけど頭は働かなくて、

私は咄嗟に笑顔をつくった


「ふふ、愛乃が可愛いから~ばいばい、」

私の笑顔を見て、安心したのか

「びっくりしたなぁ、ばいばーい」

にこりと笑って、家に入っていった

そんな反応されると、
大丈夫なのかもって思ってしまう


『そういうこと』をしても、嫌じゃないのかと

『そういうこと』をする対象に私が入ってもいいのかと

自分でも顔が赤くなってると気づくほど熱い頬に手をあて、さっきのことを思い出す


「愛乃、」

好き、

その言葉は声にはならず心の中に重く響いただけだった

プリ小説オーディオドラマ