虎杖side
あなたが伏黒を覚えていないということを、今知った。
いや、正しくは、聞いてしまった、だろうか。
事の始まり。
それは、あなたが起きた事を聞いて、保健室へ向かう途中だった。
早足で保健室へ一歩、一歩と近づく。
ふと、視界に入る空き教室のドアが空いている事に気づいてしまったんだ。
ゆっくりと近づくと、声が大きく聞こえてくる。
「 ______が、伏黒のこと覚えてないんです、!」
誰の声かは分からなかった。
けど、はっきり言葉が耳に入ってくる。
「でも、野薔薇や私のことは覚えていただろう?」
「‥‥伏黒だけ、ですね、」
俺は、その言葉で気がついた。
あなただ。あなたが、伏黒を覚えていないんだ。
「‥‥一部的な記憶消失か、初めてのものだな。」
「‥‥そんな‥ッ」
教室の中に目を向けると、家入さんと今にも泣きそうな釘崎の姿。
‥その後の二人の会話は、知らない。
俺は、何も出来ず、ただ辛辣な現実に立ち尽くしていたから。
*
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。