ずっと、暗い道を歩いていた。
一本の綱みたいな、細い細い道。
当然のことだけど、周りには誰もいなくて、何もない。
ただ純粋に、「無」だと思った。
ふと歩くのをやめ、上を向くと、ずーっと綱は続いてる。
なんだか、綱を歩きたくないと思った。
なんだか、道から外れたくなった。
自分で自分自身を捨てたい、そう思ってしまった。
だから、体を「無」に委ねた。
「__________死ねよ。」
背後から、大切な人にそう言われた気がした。
途端、頭に痛みを感じる。
イタイ、
コワイ、
もう、やめて。
「あなた、!」
ふと、頭上から彼の声が聞こえた気がしたんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!