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第2話

怖い顔
真紘はあからさまに私を避けるようになった。同じクラスにいるから、余計にそれが分かってしまう。
ひとつだけ気づいたこと。真紘の心の奥が見抜けなかった私でも、感じたこと。
真紘の笑顔が増えた。私と付き合っていた時よりいきいきしている。それなら、私は、彼にとってどんな存在だったのかな。全部作り笑いだったのかな。

そんなこと·····。そんなこと信じられない。

真紘が元カノを引きずるように、私もまだ、真紘を思い出にすることが出来ないみたいだ。


「仁奈~~!」

「しゅ·····ちゃん」

駆け寄ってきて、私のほっぺをぐっと掴む。今はきっとタコみたいに間抜けな顔をしているだろう。

「見たくないものを、あえて見ることないよ。」

「りゃ、りゃってぇ·····。」

仲良し3人組はどこまでも仲良しのようで、高校のクラスまでもが同じだった。

「あたゃし、おうりゃっておわにゃせてぁらいいかわかりゃない·····。」

タコのまましゃべり続ける私をひとしきり笑ったあと、指先の力を抜いたしゅうちゃん。

「ほんとに、真紘のこと大好きだね·····。」

「うん、好き。」

「即答かい!」

男性経験ゼロの私は『真紘の彼女になること』に対して憧憬を焦がれていたのかもしれない。だけど、それより大きく心に存在するのは、真紘を好きな私だった。
それを直ぐにかき消せるような機能性のある心は持っていないし、そんな軽い女じゃない。
あの時だって、別れたくなかった。好きだった。好きだけど、好きだから、これ以上真紘を困らせたくなかった。
私には見なくていいと言っておきながら、自分は真紘をガン見していた。僅かに唇が動く。



「まだ、アイツが好きか·····。」
「ん、何て?」
「あー·····、いや、なんでもない。こっちの話。」
しゅうちゃんは時々、よくわからない表情をする。一瞬·····怖くなる時がある。睨みつけるような、優しさが消えたような真っ黒い目。
周りの人に聞いても、えーそうかな?と言われる。だけど、真紘に言ったら「確かにそうだよな」と笑ってた。
心許せる人に見せる表情なのかもしれないけれど、私はこれが少し怖い。
「あ、これあげる。」
そう言ってポケットからゴソゴソ取り出してきたテディベアのキーホルダー。
「可愛い·····!くれるの?」
「ここまで言っておいて、見せただけ~とかやったらサイテーすぎるだろっ!」
「ありがとう!」
手のひらに収まるサイズのくまは、両手にプレゼントを抱えている可愛らしいデザイン。
「姉貴が趣味で作っててそれ貰った。」
「るなちゃんが·····へぇ、すごいね!!」
しゅうちゃんにバレないようにチラッと真紘を見てみる。真紘から離れても大丈夫だという姿を知って欲しくて、安易な気持ちだった。


目が合った時、真紘はものすごい形相をしていた。怒っているみたいに眉間にしわが寄っている。それと同時に口が動いた。
『う·····せ·····ろ·····?』
しゅうちゃんが目の前にいなかったら、テディベアを貰っていなかったら、ここがあの海だったら。





きっと私、泣いてた。