無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第8話

重なってしまう
この複雑な人間模様を表現することは、私にとって難しいことじゃない。気持ちが1度入れば、それなりに人魚姫になれる。リハーサルははじめての通しで(受験勉強で夏休みに練習できなかった。)やったが、八割完成していた。あとは衣装合わせと照明の調整くらいだろう。
真紘が王子だということは聞いていたが、リハーサルのこの日までバラバラで練習していたため、隣国の王子が誰かを知らなかった。



最後にカットがかかったと同時に声をかける。
「しゅうちゃん·····だったんだね。」
『うん。俺、王子様。最初から最後まで可哀想な役だけどね。』
「··········」
『えー、そんな悲しい顔しないでよ。冗談!どんな物語にも悪役って必要でしょ?』
「隣国の王子は、悪役なんかじゃない。」
しゅうちゃんは、きっと、重ねている。



真紘と別れた私に、間髪入れずに告白したことに罪悪感を感じている。
しゅうちゃんだけじゃない。私も、多分真紘も。この3人の壊れた関係をこの物語が断片的に表現していることに。
『仁奈は純粋すぎるからわかっていないだけだよ。』
この時、しゅうちゃんの声色が低かった意味をまだ私は知らなかった。「純粋」なんて言葉はあまりに綺麗すぎる。ただ、何も知らない無邪気な子供だったとでも表そう。私はどれほど愚かだった?きっとしゅうちゃんは言わない。
綺麗なものしか信じなくて、その裏がどんなに悲惨だったか、汚れてしまっていたのか。
私は甘い、夢を見ていたのだ。