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第6話

平々凡々
「ヴぇっ。」


黒板を見て、変な声が出る。


文化祭の出し物が人魚姫になった所までは、記憶がある。お弁当を食べたあとのロングホームルームに耐えきれなくて、別世界に行って、今戻ってきたところだ。
「どうして、人魚姫、私·····」
十人並の顔だし、これといってずば抜けたものがない。私より可愛い子なんてこのクラスにうじゃうじゃいるのに!
「え、ちょ、ちょっと待って。これ何かのドッキリ?新手の嫌がらせですか?」
委員長はヘラヘラしながら私の肩を叩く。
「だって、工藤とか、村田ちゃんとかみんな選抜メンバーだから、人が足りないんだよ。まあ、そういうことで。よろしくです!」
よりによって高校三年生の1番気合が入る時期なのだ。責任があまりに重大すぎだ。
「選抜メンバー」というのは学校中の美人のよりすぐりで結成されるグループを指す。文化祭の期間だけ体育館のステージでアイドル活動をするのが伝統らしい。



それで可愛い子がうちのクラスから消えたわけか。




なるほど·····。
「いやいやいやいやいやいやいやいや!納得出来ません!このクラスにはあと20人女子がいるんだよ!?私じゃなくていいでしょ!人来なくても知りませんよ?」
必死の抵抗を見せると、委員長は私に耳打ちする。
「頼むよ。上から消去法で見ていくと順番的に椎名なんだ。上から5番、名誉だろ?」
「ん?うう·····うん。」
悔しいけど、嬉しい。
「·····わかった、やります。でも、大根役者者ですから。」
「やってくれるなら、大根でも人参でもごぼうでもいいさ!とりあえずサンキュ!」
幼い頃憧れたお姫様役になれる。セリフを覚える憂鬱さよりも嬉しさが勝った。案外チョロい人間だなと思う。
「あ、ちなみに王子役愛しのダーリンですので!」
「愛しの、ダーリン?」
「いやだぁ、もう!とぼけちゃってぇー。」
くねくねしながらちょいちょいっと指先を教室の後方に向ける。
「ま、まさか·····!」
「そのまさかよん♡」
あれ、この人いつからおねぇキャラになったんだろう·····
「真紘ですので、こちとら本気でやらせて頂きます!」
「でも、別れて·····」
「そのリアリティが大事なんだよ!脚本もこのクラスの文学少女の飯野と図書委員長の近田が担当する。楽しみにしておけよ!ありきたりな人魚姫なんかじゃない!オリジナリルで優勝狙うぞ。」
真紘を見ると、ふいと目線を逸らされる。
向き直り、委員長にバレないように小さく息を吐いた。



少し楽しみ、なんて思ったのに、すっかりしぼんでしまった気持ちを堪えきれなかった。
変わろう、忘れてしまおう、頑張っても頑張っても空回りばかりで嫌になる。これ以上真紘に嫌われたくない。