あの日結局逃げてしまったから
彼に確認する事も
渡すことも出来なかった .
お陰様で行き場の無くなったUSBは
私のカバンの底に眠っている .
いつもならホールで
テキパキ動いているはずのスングァンは
今日は何故だか厨房にいた .
ちなみにここは高級飲食店で
私はお金のためにバイトをしている.
スングァンもここのバイトだ .
私の家は母子家庭で ,
最初のうちはどこから持ってきたのか
分からないほどの大金があったから
私もここまで成長したし ,
困っていなかったけど ,
使えばお金はなくなるし ,
母は体が弱くて
働けるような状態ではなかった .
だから私が今こうして
いいお給料を貰えるところで
バイトをしている .
お母さんもパートとかしてくれてるけど
長時間動けないから2人合わせて
ようやく食いつないでいる感じ .
団体客だからホールを
増やした方がいい気がしたけど
団体様が大人数な分
お皿洗いが大変になるし ,
今私と一緒にお皿洗いしてた子が
お休みだから
スングァンが来るのは仕方ないか .
私も彼が来るのは嬉しいから
理由なんてなんでもいいんだけど .
一生懸命手を動かしては
次から次へと送り込まれてくる
お皿を2人で洗い続ける .
手が荒れそうだけど楽しい
あまりにもびっくりしたのか
とんでもなく大きな声で
スングァンはそう言う .
永遠なんてないのだし ,
振られるのも
時間の問題だったのかもしれないけど .
貧相だからなんなの!愛ないのかよ!!
と , お皿に八つ当たりしながら
怒って喋るスングァン .
私はあなたがそう思ってくれるだけで
どうでも良くなってくるよ …
そう , 私が言いたいのはUSBの件 .
ちびりそうなくらい怖かったんだから
1人くらいには共有させて!!!
私はお皿についた泡をすすぎながら
スングァンに説明を続けた .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。