sideあなた
大ちゃんは去年の秋からお仕事で東京にいる。
遠距離は寂しいけど
頑張って待ってるね。なんて言っていたのは
去年の12月くらいまでやった。
『寂しい、大ちゃん、、』
一言呟いた途端ぶわっと不安が込み上げる。
同時に携帯が鳴った。
『大ちゃん、!?』
「あー、あなた!良かった出てくれて。」
『うん、』
「…そろそろ寂しくて泣いとるかなって。笑」
当たり。大正解。
『っそんなことない笑笑』
『大ちゃんいなくても上手くやってるで~』
「それは逆に寂しい笑笑」
『、?大ちゃん外にいる?』
電話越しの籠った声は
外にいるときの電話のそれやった。
「あー、ちょっとビデオ電話にできる?」
『え、うん、、』
切り替わった瞬間映る大ちゃんの顔。
「俺、日曜日そっち行けるで」
『え!ほんと、!?!?』
あんまり喜んだらいけないかなと思ったけど
どうしても抑えられなかった。
「も~ほんま寂しい、心折れそう~」
『ええっ、なんで大ちゃんが泣くの笑笑』
「寂しい~~、」
『泣くのは彼女でしょ。バカ大吾。』
「久しぶりやな、大吾呼び笑」
「元気なってよかった、」
「また日曜日近くなったら連絡するな~」
『うん、うん、』
「じゃあ切るな、」
『大ちゃ…大吾、!』
「ん?」
『好き、用事なくても電話して、?』
「なにそれかわいい、」
まだ繋がってるビデオ電話越しで
頭を搔く大ちゃん。
照れてるときの癖。見たのは久しぶり。
ぶちっ、
『え、、』
突然切れたビデオ。でもまだ電話は繋がってる、?
『だ、大吾、??』
「……俺も、愛してんで。」
そのまま切れてしまった電話。
沈黙が長いと感じたのはきっと私だけじゃない。
幸せを噛み締めて、明日も頑張ろって呟いた私は
きっと単純で大吾に溺れてる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!