第33話
stone06. 髙地優吾の場合
『あなた、最初は梅酒でいいんだっけ?』
「うん、ソーダ割り。」
『すいませーん、梅酒ソーダ割り2つ!』
「え、あとひとつ誰の?」
『俺ー。乾杯しよ。』
お酒あんま好きじゃないくせに。
私がきたからって自分までお酒じゃなくてもいいのに。髙地相手なのに、ちょっとキュンとした。
忙しくてツーリングにも来ない髙地に、みんなと今度は髙地も絶対来いよ、なんて話をしてバイクの話で盛り上がり。
その後も、半年ぶりくらいに会った髙地に少しずつテンションが上がっていった私は普段は言わないようなことを多々口にしたりして。
ほろ酔い〜なんて可愛いもので、すっかりできあがった状態で髙地に絡みまくり。(ごめん…。)
・・・・・なぁんて出来事があったのが数年前。
年1度みんなでこのお店に集まるといつもあの日のことを思い出す残念ながらお酒を飲んでも記憶を無くさないタイプの私。懐かしいなあ。
今日は久しぶりの集まりで、あの時とほぼ同じメンバーが揃っての飲み会。まあ当然、当時の私の話にもなるわけで。
(ねえ河野〜結局不二子ちゃんになれたんだっけ?)
「何回聞くのよ(笑)ほら!(免許証を見せドヤ顔し)」
(苗字が髙地なのウケるんだけど。)
「そりゃあ、結婚したからそうでしょうよ。」
『ここってあなたが不二子ちゃんになるって宣言した店だもんね。』
(あのあとマジで免許取ったもんな〜。)
(俺らツーリングしょっちゅう行くよなー。)
(けどあなたはナイスバディじゃないタイプの不二子ちゃんね!)
「ちょっと、うるさいよそこ(笑)」
『俺、最初はタンデムしたいのかと思ってた。』
「それもいいなあ〜最近フルフェイスのヘルメット新しくしたんだよね。」
『ハリネズミのプリントのやつでしょ?』
見せてー、と友人らに言われてスマホに保存してあるヘルメットの写真を見せたら、可愛いと評判が良くてちょっとドヤ顔。
デザインしたのは私だから、褒められて嬉しい。
「可愛いでしょ?黄色のハート抱えてるのー。」
(可愛いけど、あなたってハリネズミ好きだっけ?)
「髙地の…なんていうの?担当動物?みたいな。」
『うーん。』
「まあ、詳しくはSixTONESのJungleっていう曲を聴いていただいて…。」
(黄色は?)
「髙地のメンカラ!」
(うわ、惚気かよ〜。)
『あはは!でもあなたの推しは慎太郎なんだよね。』
家で髙地のヘルメットを間違わないようにハリネズミの絵をプリントしただけで、別に旦那大好きアピールでもなんでもないのよっていうことを声を大にして言いたい。うん。
(てかさ、今更だけど髙地って昔からあなたのこと好きだったの?)
(それ言ったら河野もじゃね?)
「え?いやあ、学生時代は私、髙地のことマジでなんとも思ってなかった。腐れ縁はあったけど。」
『俺もだなー、話はしてたけどね。なんなら卒業後の方が仲良かったよね。』
(でもさ、プロポーズしたのは河野からじゃん?)
「うん、そう。ふとした時に、この人とずっと一緒にいたいなあって思っちゃったんだよね。」
(珍しく俺らが予定合わなくて髙地と河野2人でツーリング行った時だよな?)
(あたしも富士山行きたかった〜!今度行こっ!)
『俺らもう新婚でもないのに、なんで毎回聞くわけ?(笑)』
(いや、聞きたくなんのよ。)
(いつまで髙地って呼んでんだよ、とかね。)
「だってさぁ…10年以上髙地って呼んでるのに、急に優吾って呼べなくない?」
(あ〜俺らが河野って呼ぶのと一緒か。)
(うちらはいいけどさ、あなた、あんたももう髙地だよ?)
(そうだぞ河野〜。)
(あたしらも河野じゃなくて髙地って呼ぶ?)
「みんなが私まで髙地って呼んだら、どっち呼んだ?ってなるでしょうが(笑)」
『いや、でもあなたは呼ばれてもマジで鈍いよ?気付かないんじゃない?』
「そんなこと…ない…とも言いきれない。その場に髙地がいたら、私じゃないなってなりそう。」
(うちらがずっと河野って呼んでるせいもあるのかな?)
(けど髙地いる時に髙地って呼んだらめっちゃ混乱しない?)
『すでに何言ってんだってなってる(笑)』
「私もだよ〜。だから河野のままでいいって!」
その後も相変わらずのみんなとワイワイ楽しい時間を過ごして、2人で2次会まで参加したところで、髙地の明日の仕事を考慮して電車で帰宅。
3次会、行きたかったぁ〜!