俺は何かを悟っていた...
そして血だらけになった入り口と、這うようにして残っていた床と階段の血痕...
それが付いていた理由...
全てが繋がった。
繋がってしまった。
じんたんは死ぬ覚悟で、テオくんに会いに行こうとしたんだ。
...テオくんとの約束を果たすために。
その瞬間、俺は膝から崩れ落ちた...。
ー数時間前ー
大量の血を吐きながら、彼は床を這うようにして廊下を歩き...そして...
«ゴトンゴトンゴトンゴトン!!! »
階段を転げ落ち、踊り場に激しく体を打ち付けた...
どうやら頭を強く強打し、その時に頭を切ってしまったようで、頭部からの出血が著しかった...。
...それでも彼は、立ち上がった...。
だけど..入り口まで辿り着いたところで...
今まで以上の量の血を吐き、じんたんの身体は本当の意味で限界を迎えていた...。
しかし、俺の意思とは裏腹に徐々に視界が霞んでゆく...
俺は、最後の力を振り絞って懐から大きめのナイフを取り出し......
「!!!!!!!!!!」
...そのまま自らの首を切り、致死量の吹き出しながら息絶えた...。
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今は亡骸となった友達に向かって、俺にとって1番大事な名前を呼びかける...
当然、返事はない...。
この名前を呼ぶと、じんたんはいつも笑ってくれた。
けど、そんなじんたんももう居ない...
ただあるのは、どうしようもない孤独感だけだった...。
俺は、ゆっくりと血の滲んだ1枚の紙切れを受け取った。
゛テオくんへ「1027」゛
そういうと、みやは両手で持てるほどの小さな金庫を俺に差し出した。
俺はゆっくりと鍵の番号を動かし...
...金庫を開けた。
...そこには、1冊のノートが入っていて
...俺はそのノートを手に取り、付箋のページを開いてみた。
やっぱりそうだった...
じんたんは決して遊びなんかで俺に付き合ってた訳じゃない...
最初から俺の自殺を止めるために、自分を犠牲にしてまで俺に尽くしてくれたんだ...!
目頭が熱い...久しぶりのこの感覚はなんだろう...。
病室の鏡をのぞき込むと...
涙でくしゃくしゃになった俺のみっともない顔が映っていた。
一瞬、じんたんに呼ばれた気もしたが、振り返るとその声の主はみやだった。
...かつてのように「テオくん!」...と元気に呼ばれるのとは違う。落ち着いた声...。
だけど、幼なじみだからかやっぱりどこか似てる...。
ゆっくりとみやに歩み寄る...。
すると、みやも俺を受け入れるように
俺を抱きしめた。
ダムが決壊するが如く、俺は、みやの腕の中でひたすら泣いた。
高校生らしくない、幼い子供みたいに。
気づけば、みやも泣いていた。
悲しい...悲しい...悲しい...
大切な人を失う事が、こんなに辛い事とは思いもしなかった...。
俺は、みやに微笑んでそう言った。
...そこには、かつての俺が完全に戻って来ていた。
正直に笑え、希望に向かって生き続けていたかつての俺が...。
...いや、もしかすると、それは違うのかもしれない。
俺にじんたんが乗り移ってしまったような...そんな気持ちになった。
じんたんは今もこうして、俺の中に生き続けている。
...じんたんは空を見上げてなんて言ってたけど、そんな必要はないんだ。じんたんはずっと、゛ここ゛にいる。
俺はじんたんが生きた証として、これからも生き続けてやるんだ!
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...今のこの俺がいるのは、紛れもなくじんたんがいたから。
...あの時、校舎から飛び降りていたら...
なんて考えると、夜も眠れないよ。
...じんたんには本当に感謝してもし切れない...。もちろんみやも。
俺には、じんたんへの返しきれない恩と
お寿司屋さんの1000円の借金があるからね(笑)
...ありがとうじんたん
...あなたとの約束通り俺は...
今日も元気で生きています。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。