第35話

それぞれの思い
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2019/09/10 07:54
川平 美亜
川平 美亜
王子、お茶でもいかがですか?
渡月 セシル
渡月 セシル
?姫?
川平 美亜
川平 美亜
あの、昨日はすみませんでした。
渡月 セシル
渡月 セシル
何のこと?
川平 美亜
川平 美亜
なんていうかいろいろとご心配やご迷惑をおかけしたのではないかと…!
渡月 セシル
渡月 セシル
そんなことないよ。
僕たちはこれから夫婦になるんだ。
それくらい大いにかけてくれないとね!
王子、ごめんなさい!私は本当の姫じゃないから
約束を守ることはできないけれど、
川平 美亜
川平 美亜
そうですよね!…うん、そうだよね。
渡月 セシル
渡月 セシル
…?
王子の姫を思う気持ちは本物なんだってことがわかったから…
その思いを、私に守らせてください…!!


王子の言葉を自分に言い聞かせるように呟く美亜を不思議そうに見つめる王子だった。
コンコンコン
佐々野 美咲
佐々野 美咲
お茶をお持ちしました。
川平 美亜
川平 美亜
……。
一人になり考え込んでいた美亜。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
姫?姫?!…美亜さん!
川平 美亜
川平 美亜
はい!…えっ?あっなんだ美咲ちゃんか。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
なんだ じゃありませんよ。何があったのです?
川平 美亜
川平 美亜
へっ?
佐々野 美咲
佐々野 美咲
みなさんに会われてから明らかにおかしいです。
王子とも…昨夜、何を話されていたのですか?
まさか、バレてしまったのではありませんよね?
川平 美亜
川平 美亜
うん。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
そうですか、そうですよね、それはさすがn…えっ?
川平 美亜
川平 美亜
私のせいで…
佐々野 美咲
佐々野 美咲
本当にバレてしまったのですか??
川平 美亜
川平 美亜
王子は私のことを姫だと思ってるから。
一つ一つの言葉が全部姫に向けられている。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
それは・・・
川平 美亜
川平 美亜
少なからず王子は不信感を抱いている。
私がもっとうまく姫を演じていれば…
王子にあんな事を言わせてしまうなんて、
ミーア姫だったらどうしてたんだろう…。
…私は必至で嘘を重ねることしかできない…。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
…あなたはよく頑張ってくれています。
自分を責めることはありませんよ。
――――――――――――――――――――――――――――――


だから約束しよう。もう隠し事はしないこと。

これからは苦しいことも楽しいことも全て2人で分け合っていく。


――――――――――――――――――――――――――――――
佐々野 美咲
佐々野 美咲
そのような約束を。
川平 美亜
川平 美亜
すでに嘘しかついてない中で、また、なんだか心苦しくて…
頭の中ぐちゃぐちゃごちゃごちゃしちゃって、どうすればいいのかわかんなくて。
佐々野 美咲
佐々野 美咲
美亜さん、少しあなたに負担をかけすぎましたね。
謝ります。ごめんなさい。
川平 美亜
川平 美亜
そんな、やめて!美咲ちゃん…。
私は私で王子の言葉を真に受けて複雑な気持ちになった
けど、王子の姫に対する思いは本物だってわかったから。
私は、その思いを守りたいって思ったの!
佐々野 美咲
佐々野 美咲
美亜さん、よく言ってくれました。
あと1日です。あと1日乗り越えたら全て元通りになります。
それまであともう少し、頑張ってもらえますか。
川平 美亜
川平 美亜
もちろん!やるって決めたからには最後までやり遂げます!!
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
驚いたわ。
吉田 海人
吉田 海人
あぁ美波のやつ、受け入れるなんてな。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
それもあるけど、美波に寄り添っていたのは美亜よね。
あの子は私が思っていた以上に強い子だわ。
吉田 海人
吉田 海人
だから言ったろ?
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
あっ…でもじゃあ、どうして美亜は泣いてたの?
吉田 海人
吉田 海人
美亜のことだから美波に何も言えなかったことが悔しかったとかじゃないか。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
美波にはちゃんと届いていたのに?
吉田 海人
吉田 海人
そういうやつなんだよ、美亜は。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
ふふふ。美亜のことよくわかってるのね。
吉田 海人
吉田 海人
そりゃあ古い付き合いだからな。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
ほんとに美亜のことが好きなのね。
吉田 海人
吉田 海人
はっ?はぁ?何が言いたいんだよ!
海人は本当に美亜のことを大切に思っているのよね。

その思い、守りたくなったわ…!
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
あと1日よ、これが終わったら全て元通りになる。
吉田 海人
吉田 海人
…。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
私ね、最初は美咲が家族の元に戻りたいと言えばそうさせるつもりだったの。
だけど美咲にはあんなことを言われて、正直揺らいでる。
吉田 海人
吉田 海人
…今すぐ決めなくたっていいんじゃないか。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
えっ?
吉田 海人
吉田 海人
15年間も溝があるんだ、俺にはそう簡単に埋められるとは思えねぇ。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
15年の溝…。
――それは簡単に埋められる年月ではないんだ。
吉田 海人
吉田 海人
それに、本人次第だろ。これからも変わらないここで生きてくって本人が言ったんだろ?
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
それは、そうなんだけど、私にはわかる。
美咲は私のことを思って、そう言ってくれたんじゃないかって。
だから本当は・・・。
吉田 海人
吉田 海人
ちょっと落ち着けよ!焦り過ぎじゃないか?
焦ると上手く行くものも行かなくなる。
湖姫 ミーア
湖姫 ミーア
…そうね。
こうしてそれぞれが複雑な思いを抱いたまま約束の日を迎えた。

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