あなたは、本当に優しい子ね。
でも私は大丈夫よ?一国の姫たるもの憂いの一つや二つ纏っているものなの。
だから、それを一人で背負いこまないで…
私と出会わなければあなたはこれまで通り幸せに暮らせたの。
それに私はそんなにもろくない、美咲だっているんだもの。
…そんなことありません!
美咲?
最近のミーア姫は昔の様に心から笑わなくなりました。私は姫が日に日に追い詰められていく様子を間近で見ていました。だから、1ヵ月前城を抜け出した様子を見て、少しの気分転換になるのならと内心ホッとしていたのです。
何言ってるの?私はいつも通りよ?ただいろんなことがあったから余裕がなくなっていただけよ。
いいえ、それを普通と思いこもうとしているだけ。毎日一緒にいる私ならわかります。
美咲…。
お願いですミーア姫、美亜さんのせっかくのご提案を受け入れて少し王宮から離れた生活をするのも良い案だと思うのです。どうか美咲の願いを聞いてはもらえませんか。
美咲の思いがけない言葉に戸惑うミーア。目線を向けられた美亜もコクンとうなづいてみせる。
海人…いいのかしら?
あーもう!なんで俺に聞くんだよ!!もう決まってんじゃねーかよ。
えっと…つまりそれって…
よろしいということですね?
素晴らしい友情だ。後の事は私がなんとかしよう。
海人とやら、君にはまだ感謝を伝えていなかった。
娘たちに手を貸してくれて、この通り感謝する。
いや、俺は何も…。
これからもミーアをよろしく頼む。
そして、美咲。昔からずっとミーアの傍でよく仕えてくれた。
美亜を頼んだぞ。
はい。お任せください。
そしてミーア、美亜16歳の誕生日おめでとう。
えっ?あっこのドタバタですっかり忘れてたけど、そっか私たち同じ誕生日なんですよね。
そうね、美亜おめでとう。生きていてくれてありがとう。
ミーア姫に出会えてよかった!誕生日おめでとう!
きっと、亡くなった女王様も喜んでくれているはずですね!
…お母様なら元気に暮らしてらっしゃるわよ?
えっ?えっ!てっきりお目にかからないから…ごっごめんなさい!
無理もない、妻にはこの事実はとても言えない…。
どういうことですか?
お母様は、あなたを失ったことを知ってから精神を病んでしまったの。
だから今は別の場所で療養しているわ。
そうだったんですね…。何も知らなくて、ごめんなさい!
でも母との思い出はある。お父様とご結婚する時に着ていたウエディングドレス。
お母様はいつもそのドレスを私に着せたいとおっしゃっていたの。
だから楽しみにしてたのよ…だけど、それはあなたに着て欲しい。
そんな大切な思い出なのに…
私だって、あなたの大切なお母様のドレスをあなたより先に着てしまったんだもの。
あっ、これ…。
そういうこと。……そういうこと?
自らが双子を引き離してしまったことで、お母様の心を壊していってしまった…
全てお母様のためだったのですか?お父様…。
不安定なお母さんに今、美亜と引き合わせるのは酷だと思い、少しの猶予と思い提案したことだったのだ。徐々にお母さんの体調を見て引き合わせようと…。
それに、美亜の家族や、城之崎さん一家を見て思った、お母さんと共に三人でまた楽しく暮らすことができたら…と。昔からミーアには寂しく辛い思いをたくさんさせてしまった。
ごめんなさい、お父様…私、お父様の気持ちを全然わかっていなかった…。
お前は何も悪くない。悪いのは全て私なのだから、苦労をかけたな。
うわーん。私バカだから私の楽しい事を姫もできたら心も晴れるって思ってたけど、違ったそれが一番幸せな選択だよ…。
おい、せっかくの親子の絆再確認の大事な場面だろ!お前の号泣で全部持ってかれたぞ…。
ふっあはははは。
美亜、辛い立場を任せてしまうが、私が必ず母に再会させてやる。
そして、お前たちが双子だということもその時が来たら必ず公表する。
美亜、辛くなったらいつでも連絡してきてね。
はい。
こうして私は再び、ミーア姫になることになった。
16歳になったミーア(美亜)はセシル王子と婚儀を挙げた。
私は今、プリンセスとして生きている。
――本日、カナリア王国よりいらしたミーア姫は、お母上のウエディングドレスを身にまとい、この良き日、国民に祝福され、我らがリリアン王国ロイヤルファミリーの一員に加わりました。――
……。
はぁ美亜、綺麗だな~。
隣には俺がいるはずだったのに~。
とか思ってんの?
勝手に俺の気持ち代弁してんじゃねーよ!
それに、声でけーから!静かにしろ!!
ごめんごめん。
でも否定しないんだね~。
べっ別に。
やっぱりウエディングドレスは女の子の憧れだよね♪
あれから、お母様は療養先から城へ戻ってきて、三人でひっそりと穏やかに暮らしてきた。
美波からウエディングドレス姿の美亜の写真が届いた。
美亜…綺麗…。
ああ、とっても。
お母様、これお母様のドレスよ。
ウエディングドレス姿の美亜を見せる。
わぁ私のドレス。…この子はだーれ?
私のミーア姫じゃないようだわ。
わかるのか?!
――私の望みは、王子と共に幸せに暮らすことですわ。
王子、ごめんなさい、あの時の約束を破ってしまって。
でもお陰でそれ以上の愛を今、手に入れようとしています。
ミーアが本当の愛を確かめようとしていたその頃、美亜はあることを思いついていた。
えっ?披露宴を延期にしたい?
はい。
どうしてまた…。
大切な人に、幸せになってもらいたいから…
それまで待ってほしいんです。
…大切な人?
あっカナリア王国にいるかけがえのない友人です。
その子にも披露宴に出席してもらいたいから。
…わかったよ。
君にそこまで思われているそのご友人は必ず幸せになる。
はい。
――約束しよう。もう隠し事はしないこと。
これからは苦しいことも楽しいことも全て二人で分け合ってく。
王子、ごめんなさい。たくさんの嘘を付いてしまって…。
でも、もうすぐすべてが元通りになるはずだから。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!