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第9話

良い奴
                                                                Shintaro side



「お兄ちゃん今日何時に迎え来てくれるのー?」

小さな妹の手を握ってまだ春の匂いが残る桜並木の下を歩く。

「今日は早く迎え行ってやるからな」

「ほんと?」

「その代わり、ちゃんといい子にして待ってられる?」

「うん!いい子する!」

妹はまだ幼稚園通いで、1人じゃまだ何も出来ない。
両親と兄貴、俺、そして妹の五人家族。
正直家計は厳しくて両親は働き詰めでほとんど家にいない。兄貴は社会人で忙しい。だから俺が妹の送り迎え担当。ご飯と弁当はいつも母親が仕事の合間に帰ってきて作ってくれる。

少しは俺も料理できるようにならなきゃな。

妹を幼稚園に送り届けてから急いで高校に向かう。
…お、あれはジェシーと、幼なじみのあの子か!
後ろ姿からでもわかる。男の俺から見ても惚れるくらいかっこいい。それにお似合いだ。

声をかけようとしたけど邪魔しちゃ悪いからここは我慢しよう。変な葛藤をしながら下駄箱に差し掛かったところで予鈴のベルが鳴った。

「慎太郎、今日からお前週番だろ」

肩をぽんっと叩きながら横を通り過ぎる黒髪の奴。
えぇぇぇ?!俺だっけ?!知らない!知らない!
聞いてないよそんなの!

「え、ちょ、北斗!なんで昨日教えてくんなかったの?!」



朝から今日は散々だった。週番の仕事忘れてペナルティ課せられるわ、体育着忘れるわ、6月にある球技大会のクラス代表に選ばれるわ…妹よ、兄ちゃんは頑張ったぞ。

北「色々お疲れ」

ぐったり机に伏せていると頬に冷たい感触がしてがばっと起き上がれば俺の分まで買ってきてくれたのか、北斗の手には2つの缶ジュース。

「北斗ぉぉー!お前ってほんと良い奴だな!」

お礼に抱きしめてあげようとすると軽くかわされ、
「お前ほんと騒がしい」なんて言われたけど、顔は嬉しそう。
北斗ってこんな良い奴なんだぞってみんなに教えてあげたいけど、なんでか北斗はみんながいる所ではこんなことしないし、こんな優しく笑わない。

「だから誤解されるんだ北斗は」

小さく呟いた声は放課後の教室に吸い込まれていく。北斗は聞こえないふりをして昨日と同じ本を開く。つまんなそうな顔して。