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第2話

とりとめのない #2 黒い男
39
2019/01/28 09:31
黒い男。

どこで見かけたんだろう。

記憶の端にちらほら、現れては私を苛まさせる、影。



初めて見掛けたのは、もういつか覚えていなくて。

でも確かに、は存在していて。


例えるなら、そう。

ーー守護霊とは真逆の存在の




“苛まされないで”


突然、美しい声が聞こえた気がした。
まるで私をそれは助けるみたいに、悪い誘惑に導かれない様に囁く声。

……きっと私を護っている存在、なのかも。




そう。が見えた時はいつも。

その後ロクなことは起こらないの。


ある意味では警告。

ーーそれとも呪い。




今日も帰り道で現れた。


道端に、立っている。


黒いシルクハット、黒い外套に、背広に身を包んで。


深く被った帽子の奥に視線は隠されて、見えることはない。




ーーああ。また、何か起こるんだ。


薄暗い予感だけが重く肩にのしかかった気がして。




次の日、友達の大切にしていたペットが息を引き取った知らせを聞いた。

もう老齢だったから、きっと寿命。

それとも?



黒い男が今日も現れないことを祈って、私は玄関の扉を開けた。

1日が、始まるーー

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