意識がもうもうとするなか
小さな女の子の声がした
それに気づき
私は体を起こす
女の子はフードを被っており
顔が良く見えない
見える物と言えば
静かに笑う白い歯ぐらいだ
おかしい
体に痛みが無い
それどころか傷も、痣も無い
学校も………だいぶ変わっている
あんなに古臭かった見た目の校舎は
まだ少し古いが、さっきより新しくなっている
窓のひびなども減っており
私は自分の目が信じられなくなった
女の子はそれだけ言うと
私から少し離れ
笑みを向ける
私はそれに恐怖を覚え
すぐにリュックからスマホを取り出す
本当に…………なんなのこの空間
電波が届かないどころか
時間が夜の11:53で止まってる
ここに……………時間は存在しないのか?
私はその名前を聞くと
あの手紙を思い出した
あの手紙を………書いた人物なのか?
私は聞きたい事がたくさんあったが
まずはと、状況確認を試みる
私の勘は当たっていた
どうにもここの学校には何かを感じる
そして、あのポスターも…………
もしあのポスターを張ったのが私なら
だいぶ昔からここにお世話になっていたのだろう
ドアは黄色いテープで張り巡らされており
外から棒のような何かで押さえつけられている
出るには…………言うことを聞いた方がいいのか
いや、まずこの子は私の味方なのか?
心を読まれた…………?
いや、そんなはずは……………
サクラはそう言うと
少し面白そうに私を見つめる
びっくりした顔が…………おかしかったようだ
信じたくないが
ここでは信じるしかないか…………
早くここを出たいし
早く帰りたい
今は手段を選ばずに進む方が手っ取り早い
……………………この子を信じてみよう
先生のお部屋…………職員室か
サクラは地図を見ると
手に持っていた赤い色鉛筆で職員室を囲む
職員室は…………廊下の一番奥か
私は懐中電灯を照らしながら
長い廊下を歩いた
…………廊下の途中には
人が足掻いたような血の跡がついていたのに
私は気を失いそうになった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。