あちゃみside
今の時刻は予想通り日を越した午前2時
そして場所は家までの最寄りの駅を降りたところ
疲れた。単刀直入に言うとそうだ
もちろんこんな時間まで働いてたら疲れるが、それだけでは表せれない疲労が溜まる
今日も、言われた
『橙くんはいい意味で子供っぽいよね』
『なんだか先輩って私より年下みたいで可愛いです!!』
いい意味って何?
私はれっきとした大人なのに、もう子供じゃないのに
私がしている事はそんなに子供っぽい?
私は頼りない?大人になれてない?
疲れた体と脳ではポジティブな方向には行けなくて
疲れたとか、嫌だとか、ネガティブな感情がぐるぐる渦巻く
高校生の頃、一時期友達だった子に言われたことがある
『麻美は子供っぽいから隣に居ると恥ずかしい』
それ以降遊ばかなくなったし口も聞かなかった
そして高校卒業後から疎遠になり、もう話さなくなって何年か数えるのもめんどくさくなってしまった
もうあの子の事は思い出さない
当時は悲しかったけど、今では別にどうも思わなくなったから
ただ
隣と聞いて思い出す人が一人いる
1人夜道でそう呟く
がっちゃんは冗談はすぐ口にするけど、本音は凄く優しいから、私に合わせて言ってないだけかもしれない
私はがっちゃんやみんなの前では私で居られるけど、みんなは……がっちゃんは、それを恥ずかしいって思ってるのかな
涙がボロボロこぼれてしまう
堪える気になれないのは誰も居ないからだろうか
嗚咽も堪えずに零す
こんなとこ、誰にも見せれないからこんな時くらいは思いっきり泣いてしまう
ゴシゴシと手の甲で涙を拭って歩き出す
早く帰らないと、がっちゃんが待ってる
〜家の前〜
家の前で鏡を見る
その鏡に映った自分の顔は酷かった
擦った目は真っ赤で、髪もボサボサ、表情も硬い
髪は整えて、表情もできる限り自然を意識する
……目はもう無理だけど
それじゃあ明らかに怪しいか、なんて1人で突っ込む
……寂し
そんなことを考えながら家のドアを開けると
そこには
がっちゃんが仁王立ちしつつ居た
急な明るい場所に目が眩む
パチパチと瞬きをしながらなんでここに……?と聞こうとしたが、がっちゃんの声によって遮られた
まさかの第一声が謝罪で頭にハテナを浮かべる
そう明るく言いながら悩むふりをする
いつも通り……いつも通り……
そう考えながら玄関に上がると、すぐさまがっちゃんの香りがふわっと広がって香る
抱きしめられてる
そう理解すると急に顔が真っ赤になった
ちゃみんの悩みに、気づけれなかった
がっちゃんはそう言い私をより一層抱きしめた
……そう言ってる時点で気づけてるじゃん
収まったはずの涙がまた零れてきた
声が満足に出せれない
ただ途切れ途切れになりつつそう否定すると、またより一層ぎゅっと抱きしめられた
そろそろ苦しいな。なんて思っていると
がっちゃんにそう言われて頭が真っ白になる
やっぱりがっちゃんは気づいてくれた
気づいてくれたけど、気づいて欲しくなかった
やっぱり
嫌だ。恥ずかしかったなんて言わないで
お願い、とただ心の中で願う
言われたら私…………
しかしがっちゃんは私の想像を軽く超えて言った
優しく、でも芯がある声で
今のがっちゃんは嘘なんてついてない。そう思えた
涙が零れてきた
どんどん零れて、がっちゃんの服を濡らしてしまう
ごめんね。なんて思いつつ行動は反対に涙を染み込ませるように抱きしめていた
がっちゃんも今だけは優しく頭を撫でてくれた
〜次の日〜
目を覚ますと、そこはいつもの寝室ではなくリビングのソファーだった
起き上がって少し伸びをする
するとキッチンの方からアイクさんがやってきて
と声をかけた
私もおはようと声をかけつつ
そう疑問に思っていたことを口に出すとアイクさんは苦笑しつつ
吃驚しましたよ。と何だかはぐらかすように言う
なんでそんな曖昧なんだ……?と思っていると、昨日の事が急に頭に入って来た
そういえば昨日、がっちゃんに知られて、泣いて、そのあと……どちらからともなくキスをして……
そして……なんてその先は思い出すのも恥ずかしかった
まぁ下着だけですけどね。では自分はwatoさんを起こしに行きます
そう言いながらアイクさんは飲み終えたカップをシンクに置き、そのまま上がって行った
どうやらwatoさんを起こしに行ったのだろう
ふと自分の体を見ると、本気で下着以外に何も着てなかった
それを知った瞬間にすぐさま近くにあるパーカーを掴んで着た
このパーカーはがっちゃんのだが、今更どうでもいいと言うように着替える
と辺りをキョロキョロすると、ソファーの少し先に雑魚寝をしているがっちゃんが居た
がっちゃんもまた上半身裸で寝ていて思わずタオルケットを投げてしまった
顔が真っ赤になってしまう
顔を手で覆いつつ、その顔の赤さや暑さを何処へやろうか
しかし
嬉しい。そう思ってしまうのは
私が子供だろうか
もしそうだとしたら
それだけだったら子供って言われるのも、ありかもね
なんて思った午前7時だった
〜あとがき〜
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。