作戦の意図を教えてもらえないのは、今回に始まったことではない。
これは、敵に捕まるという最悪の事態を想定してだ。
拷問や自白剤による情報流出を防ぐため、必要以上の情報は与えられないのだ。
その日、ラブルは女子高生になる決心をした。
──ニホン Y市の一軒家──
ラブルは、鈴木エイミという女子高生として、ニホンにやって来た。
その名前を考えたのはボスだった。
どうも、ラブルが組織内で随一のエイム能力を持っているからだそうだ。
エイムとは、主に銃の使用において、狙いをつけるという意味だ。
たしかに、銃の腕前は誰にも負けない自信があるが……。
ノワールとシラーズは、α機関の仲間だ。
ノワールは、鈴木ハナコという名で母親役。
シラーズは、鈴木ヒロシで父親役となる。
すでに三人は、「ニホン人っぽい」変装をしていた。
諜報員として、常に何者かになりきっていることが多いので、会う度に印象が違う。
ノワールは組織において、主に情報収集を担当している。
数時間あれば大統領の愛人、性癖さえも特定できるという。
普段はとても頼りになる女性ではあるが……。
ノワールはそういって抱きついてきた。
シラーズがうんうんと頷いた。
シラーズは組織において、諜報活動に必要な機械類の開発を担当している。
彼の開発した最新鋭のグッズは、世間一般ではお目にかかれないレベルの性能を誇っている。
彼の存在もまた非常に重要ではあるのだが……。
シラーズも近づいてきて、ノワールの反対側から挟むように抱きついてきた。
シラーズはしんみりとした口調でいった。
みなそれぞれに事情があり、諜報員となったのだ。
はてさて、どうなることやら。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。