第2話

第2話 女子高生として潜伏せよ
7,452
2023/03/22 23:00
ボス
ニホンの高校に、女子高生として潜伏せよ
ラブル
ラブル
…………
は?
ボス
聞き取れなかったか?
ニホンの高校に──
ラブル
ラブル
聞こえてます
ラブル
ラブル
意味がわからないです
ラブル
ラブル
ニホンの高校に女子高生として潜伏するって……
それが平和の維持に何の関係があるんですか
ボス
αアルファ機関から裏切り者が出た
ラブル
ラブル
ボス
諜報員が任務中に謎の死を遂げている
情報の流出が原因だろう
ボス
そして、お前の情報も漏れている
予定通りに動けば確実に殺される
ラブル
ラブル
そんなの、返り討ちにしてやります
ボス
お前の実力ならできるかもしれない
しかし敵が一人とは限らん
裏切り者の特定が済むまで、お前は身を隠すんだ
ラブル
ラブル
事情は把握しました
しかし、だからといってなぜニホンの高校に潜伏するんですか
ボス
それについては答えられない
 作戦の意図を教えてもらえないのは、今回に始まったことではない。
 これは、敵に捕まるという最悪の事態を想定してだ。
 拷問や自白剤による情報流出を防ぐため、必要以上の情報は与えられないのだ。
ラブル
ラブル
(ニホンは危険な印象はないけど……)
(でも、ボスの命令は絶対だ)
ラブル
ラブル
わかりました
 その日、ラブルは女子高生になる決心をした。
──ニホン Y市の一軒家──

 ラブルは、鈴木エイミという女子高生として、ニホンにやって来た。
鈴木エイミ
鈴木エイミ
(それにしても、鈴木エイミって……)
 その名前を考えたのはボスだった。
 どうも、ラブルが組織内で随一のエイム能力を持っているからだそうだ。

 エイムとは、主に銃の使用において、狙いをつけるという意味だ。
 たしかに、銃の腕前は誰にも負けない自信があるが……。
鈴木エイミ
鈴木エイミ
(だけど、なんて安直な……)
(ま、どうせ任務が終わったら捨てる名前だし、別にいいけど)
ノワール
ノワール
ここがあたしたちの家なのね
ノワール
ノワール
さすが、ニホンの家はウサギ小屋といわれるだけある
ノワール
ノワール
せまーい
シラーズ
シラーズ
狭いほうが掃除が楽でいいじゃねぇか
ノワール
ノワール
あたしが狭いところ苦手なの知ってるでしょ
 ノワールとシラーズは、α機関の仲間だ。
 ノワールは、鈴木ハナコという名で母親役。
 シラーズは、鈴木ヒロシで父親役となる。
 すでに三人は、「ニホン人っぽい」変装をしていた。
 諜報員として、常に何者かになりきっていることが多いので、会う度に印象が違う。
ノワール
ノワール
まあでも、『住めば都』って言葉がニホンにはあるらしいし
 ノワールは組織において、主に情報収集を担当している。
 数時間あれば大統領の愛人、性癖さえも特定できるという。
 普段はとても頼りになる女性ではあるが……。
ノワール
ノワール
何より、ラブルと一緒だし
あ、今はエイミちゃんか
 ノワールはそういって抱きついてきた。
ノワール
ノワール
んー、可愛い!
ニホン人の姿も似合ってる!
鈴木エイミ
鈴木エイミ
ちょっと、うざい
ノワール
ノワール
冷たいんだからぁ
今日からあたしの娘なんだから、ちゃんと演技してよね
シラーズ
シラーズ
うむ、ノワールのいうとおりだ
 シラーズがうんうんと頷いた。
 シラーズは組織において、諜報活動に必要な機械類の開発を担当している。
 彼の開発した最新鋭のグッズは、世間一般ではお目にかかれないレベルの性能を誇っている。
 彼の存在もまた非常に重要ではあるのだが……。
シラーズ
シラーズ
日頃から役になりきること
それによりリアリティが出る
シラーズ
シラーズ
と、いうわけで……
シラーズ
シラーズ
おー、我が愛する娘よ!
 シラーズも近づいてきて、ノワールの反対側から挟むように抱きついてきた。
鈴木エイミ
鈴木エイミ
(ったく、ウザいな……)
(仕事中は有能なのに)
(なんでオフはこんなにふざけた奴なんだろ……)
シラーズ
シラーズ
うんうん、本当の家族みたいだ
シラーズ
シラーズ
俺にも、ノワールみたいな嫁と
ラブルみたいな娘がいたんだがなぁ
 シラーズはしんみりとした口調でいった。
 みなそれぞれに事情があり、諜報員となったのだ。
シラーズ
シラーズ
おっと、悪ぃ悪ぃ、暗くなっちまったな
シラーズ
シラーズ
とにもかくにも、今日から俺たちは家族だ
俺は鈴木ヒロシ、ノーワルは鈴木ハナコ
シラーズ
シラーズ
そしてラブルは、鈴木エイミ
シラーズ
シラーズ
我ら三人、普通の家族として、ニホンに潜伏するぞ!
ノワール
ノワール
おー!
 はてさて、どうなることやら。

プリ小説オーディオドラマ