──M学園高等学校──
ドアを開けると、朝のホームルーム中だった。
ボスに渡された資料の中には、『ニホンのJKの遅刻理由』なるものがあった。
一瞬、クラス内が静まりかえったが、すぐに笑いが巻き起こる。
先生、生徒たちは笑い、盛り上がっている。
休み時間。
湯川サエは教室の端っこで、転校生の鈴木エイミを見ていた。
エイミの周りにはたくさんの生徒がいて、質問攻めにしている。
ちらりと横を見る。
姫野ユリが、面白くなさそうな表情で頬杖をついていた。
入学直後、最初にクラス内で自己紹介があった。
そのときに目立った女子がいたけど、ユリの癇にさわったらしい。
裏で「教育」が行われ、その女子は以後、目立たないように振る舞うようになったのだ。
体育の授業になった。
今日の授業は、いくつかの球技から一つを選択して練習をするらしい。
とあるテニスクラブの講師が麻薬取引に関係しているという噂があり、潜入捜査をしたことがあった。
そのときに基本的なルールや動きは覚えたのだ。
『何でも』っていう部分が引っかかる。
姫野ユリは意地悪な笑みを浮かべた。
優しい子というのは訂正。
姫野ユリは、どうやら腹黒い子らしい。
生徒たちが盛り上がっており、授業そっちのけでテニスコートに集まっていた。
先生も観客として見ている。
だけど、気になることがある。
ゲームに負けた方は、相手の下僕になるらしい。
エイミはボールを放り、ラケットを振り抜いた。
弾丸のようなボールが目の前に着弾し、強烈なバウンドとともに背後に跳んでいった。
二本目も強烈なサーブだった。
何とか打ち返すものの、力負けしてネットに阻まれる。
30-0(サーティ・ラブ)。
あと二本取られたら負けとなる。
三本目。
強烈なサーブではあったが、ネットに阻まれた。
エイミは立て続けに失敗し、ユリの点数となった。
次に打ってきたサーブは、スピードはあるものの、打ち返すのは容易だった。
エイミはこちらの返球に追いつくものの、空振りした。
これで同点だ。
さらに次のサーブも弱く、打ち返すことはできた。
何度かラリーが続いた結果、エイミが立て続けにミスをした。
そして、ユリの勝利がかかったこの場面でも、こちらが打ち返した打球をエイミは空振りした。
打球には追いついているのに、スイングはまるで素人だった。
これにより、ユリの勝利となった。
見物していた生徒たちは大いに盛り上がった。
ユリは肩で息をしながら、舌打ちした。
ただ、最初の約束により、鈴木エイミはユリの下僕となった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。