──昼休み──
負けたために下僕となってしまったが、仕方ないだろう。
そういってユリは百円玉を投げてよこした。
ユリが鋭い声を上げると、生徒たちはみな視線を逸らした。
ユリは意地悪な笑みを浮かべた。
エイミは教室を飛びだし、廊下を駆けた。
階段に向かうが、すでにたくさんの生徒たちがいた。
辺りを見回す。
階段の手前に空き教室があった。
エイミは教室に飛び込み、誰も見ていないことを確認して窓から飛び下りた。
二階から地面へ、しっかりと受け身を取ることで、衝撃を限りなくゼロにして着地する。
時計を確認すると、三十秒が経過していた。
校舎の外周を回り、玄関に向かう。
中に入ると購買が見えてきた。
百円を取りだす。パンなら何でもいいだろう。
無事パンを購入したが、階段から生徒が下りてきた。
あの人混みをかき分けていたら確実に間に合わない。
来た道を引き返し、先ほど着地した場所まで向かった。
そして、外壁に設置されているパイプをよじ登り、空き教室に戻った。
空き教室を飛びだし、教室に向かう。
廊下にも生徒がいたが、合間を縫うようにスルスルと走る。
教室に飛び込み、ユリの前に到着。
ユリは目をぱちくりさせた。
少し茶化すようにいってやった。
ユリは悔しそうな表情を浮かべるものの、すぐにかぶりを振った。
その言葉に反応し、ユリはキッと睨んだ。
女子生徒は慌てて口を塞ぐ。
そんな声が上がるが、ユリはお構いなしに続ける。
男子たちは盛り上がったが──
女子たちは引き気味だ。
当のエイミはというと、
安堵していた。
諜報員の養成所にいた頃、教官の無慈悲なしごきを何度も受けてきた。
たとえば、規定のトレーニングに少しでも遅れれば、追加で腹筋・腕立てを各百回ずつ、それを五分以内にこなさないと飯抜き、なんてあったか。
それはまだ甘いほうで、思いだすのも苦痛な罰ゲームを数多く経験している。
エイミはスカートの端をつまみ、たくし上げて見せた。
ユリは怒って教室を出て行った。
ユリは焼きそばパンをかじりながらスマホをいじっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。