ーー中学三年生、春。
放課後、微かに赤みがかった光の中でサッカー部だろう、懸命に走る少年達。
私はその中に、見覚えのある男の子を見つけた。背が高く、スラリと長い手足。
ユニフォームをなびかせ、大きく足を蹴りあげる。
ボールは勢いよく宙を突き進み、見事にネットに入った。
ゴールを決めた少年が振り向く。
満面の笑み。
少年達が、スポーツバッグを片手に散らばっていく。
私はその中の1人をそっと呼び止めた。
背の高い少年ーー杉本蒼太がサッと振り向いた。
切れ長の目が私を捉える。
サラサラと揺れる髪の影に、大きく見開いた蒼太君の目。
もう一度呼びかけると、見開かれた目が少し落ち着いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。