私は余命宣告されている。しかしそれはあることをしなければ余命が減る事はない。
カウントダウンは止められるのだ。
生きれる時間が減るくらいなら話したいなんて思わない。
命をかけてまで話したいなんて思わない。
でも
何故だろう。
今、無性に話したい。
目の前にいる、さっきからごめんしか言ってくれない彼の背中に向けて伝えたい。
死んでもいい。
伝えたい。
気付いたら、私は声を出していた。
自分でも久しぶりに聞くその声に、私自身が驚いた。
しかしその倍以上彼は驚いていた。
彼は小さな声で問いかけてきた。
さらに言葉を発そうとする私を見て彼は私の肩に手を伸ばした。必死に、汗を流しながら止めようとするのでさっと彼から顔を背け、ノートに手を伸ばした。
それを見て彼は安心し、ホッと胸を撫で下ろすと私の頭をポンポンと撫でた。
照れながら、そして喜びながら、私はノートに文字を書いた。
ノートを見て、開けた口を咄嗟に閉じる彼。
ちょっとして、再び口を開ける彼。
!?!?
嘘…両思い…!?!?
え?
気づかなかった、両目からポロポロと出てくる涙に
彼の目からもあ涙が零れる。
そのページを見た彼は耳まで赤くなった。
そして彼は私の背中にそっと手を伸ばし、私の体を優しく包み込む。自然と私も腕を彼の背中に伸ばした。
夕日が半分沈む、赤い空に星がキラめく空の下で恋人になった。
今、世界で一番幸せな人は私なんだと心の中でそっと思う。
彼になら、命をかけてでも言葉を伝えたくなる。
私の今までの考えをひっくり返してくれる彼に、私は感謝している。
さらに強くぎゅっと抱きしめてくれる彼と、ずっとこのままでいたいと思った。
空の色がオレンジから淡い黒に染まるまで、私たちは抱き合った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。