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収録が始まり、隣に座っているシャオジュンを見る。
普段なら、俺の視線に気づいて
俺と目を合わせながら
あの綺麗な笑顔で微笑んでくれるのだが、
今日は笑顔を見せるどころか、
俺と目を合わせる気配すらない。
結局、シャオジュンは俺の顔を1度も見ないまま
収録が始まった。
今日の収録は嫌なことに、
○○なメンバーは?
だとか、
○○するとしたらどのメンバー?
みたいな メンバー同士のケミを
強調するようなものだった。
シャオジュンは、どんな内容の質問をされても
必ずと言っていいほど俺を選ばなかった。
やっぱり、信用なんて簡単に失うんだな…
収録中にもかかわらず、そんなことを考えている俺に
司会の女性は質問を投げかけてきた。
『ルーカスさんにとって、いちばんイジりがいのあるメンバーは誰ですか?』
🦁「wow……シャオジュン?」
『確かに動画とかでもよくイジってますよね〜?これに対してシャオジュンさん、どうですか?』
🦖「や、ほんと大変なんですよ、笑
暇さえあればすぐに変なことしにくるんで、」
🦁「やー、そんなことないだろ!?」
🦖「あるだろ!」
よかった、つい無意識のうちに
シャオジュンって答えてしまったけれど、
シャオジュンが返事をしてくれて、
上手に話してくれたおかげで
番組には影響してなさそう。
そんなトークが続いてしばらくした時、
司会の女性が
『ではシャオジュンさんはルーカスさんに対して、どんな風に思っていますか?』
なんて、際どい質問をした。
隣のシャオジュンが、ぴく、
と反応したのが嫌でも分かってしまう。
🦖『…そうですね、…いいメンバーです。WayVに欠けてはならない存在、ですかね。』
🦁「シャオジュン!そんなこと思ってくれてたのかよ〜!」
分かってる、
これがきっと番組用のコメントだってことは。
愛しているから、
嫌でもシャオジュンの事は分かってしまう。
番組用の言葉だとしても、
単純な俺は喜ばずにはいられなかった。
その時に、初めてシャオジュンと目が合った。
シャオジュンの瞳は、
悲しいようにも 怒っているようにも見えたが、
それよりもシャオジュンの心の奥底にある感情が
全く読み取れないようなものだった。
自分の瞳は、きっと ゆらゆら揺れている。
俺たち2人しか分からないような、
神妙な雰囲気に司会者は気が付かないまま
その日の収録は終わった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!