第27話

味方同士
237
2023/03/19 13:12
セツが崩れた。

というより、崩した。
セツ
っ………゛
ルイ
隙だらけだね
僕は打ち込む。鋭く、抉るように、これでもかと思うほど。







耳には平衡感覚を司る器官がある。
何らかの刺激_______電流や音によってそれは乱れる。

そして、僕の場合は”音“だった。

周波数さえ操作すれば、直接その器官に呼びかけることは可能であり、そして能力であれば
無駄に周りに被害を及ぼすこともない____________
セツ
っ………ぅぐっ……゛!
ルイ
って、どこかのガリレオ大先生が言ってたよ
肋骨を折る。聞き慣れない骨の音。まるでなぶっているようで感じが悪い。

大腿に拳を貫き、血が飛び散る。頬に数滴ついてしまった。
少し生温かったけど、少ししたらすぐに冷めた。

セツは、よく唸ってくれる。



吸血鬼の殺し合いは基本タブーだ。

何故なら決着は、



相手の決定的な肉体の破損や、失血死が殆どだからね。

なぶって、散らして、ぐずぐずになるまで臓器を引き摺る……人道的に不適切だからだ。



セツの回復力は革命児の中で1、2を争うほどである。
穴のあいた大腿部、潰れた眼球も、着々と治っていっている。

だからこそ、加減を間違ってしまいそう。

赤、赤、赤…………抜けた血は生成されない。

あと一押し。意識を奪わないと。
ルイ
……死なないでよね、4番目


そう挑発した途端














セツ
っ………………!!
セツは目を見開いた。



瞬間、銃弾が飛んできた。
音よりも速く、機械のように正確で、ナイフよりも鋭く重い弾。

それが僕のこめかみを貫いた。
ルイ
っ、………………………?
思考は止まる。焼ける。蒸発する。

だって、だってこの弾は。



ルイ
……………ライ、ナ  
ライナ・ブラッドリー
2007年7月19日生まれ 15歳
能力:睡眠

所属は潜入、誘導、暗殺の第7部隊。

小さい頃から訓練され、その腕は1流と言っても良い。
また軍内で義務化されている狙撃訓練でも、成績は優秀。

その武器は
ルイ
(超高精度の気配感知と、弱点を射抜く正確性…)
セツ
っ……はぁ…驚いたか?
回復の追いつかぬまままたこめかみを蹴られる。

能力も切れた。構え直しても、もう遅い。
セツ
気配は、”感じる“もんだぜ
右肩の肉が、弾け飛んだ。





ルイ
っ………………
ルイ
…………………………ライナ……
セツ
ライナの弾の正確度はやばい。
その代わり……

装填は遅いし射程が短い
ここまで来たら能力圏内だ、と言い肩を回す。
……どうする。
ルイ
このまま動いたら、セツ死ぬけど?
セツ
あの人が死ねっつったんだよ。本望だ
本当に、
ルイ
…………めんどくさい
殺してしまう。
セツは距離を取り拳を固めている。

僕は回復スピードでは勝てない。まだ全て回復していない。
セツ
本来ブラフとかの“幻影”の使い方は苦手なんだ。
本領を発揮出来ない。
目の前の街が瓦解する。炎が激しさを増す。

血溜まり、それもすぐ地面に染み渡る。
ここは………僕の
女の子
助けて!!助けっ…なんでもするからぁぁ゛!!
商人
あぁ、構わない。抵抗するなら多少傷つけても文句はいわない。
だが女は丁重に扱え。価値が高い。
ここは僕の妄想だ。
一つの小さな事件から膨らんだ、ただの夢だ。酷い酷い、フィクションだ。
殴られる。これは幻影だ。そう。僕はセツを止めなきゃいけない。
波動は傍で感じる。守れ。動くんだよ
人間
なぁ助けてくれ、集落が……俺の女房が…なぁ、何の映画の撮影だ?
こんなの…まだ予告されてないしさ、なぁ……その目を………っ
人間
いや゛ぁぁああ゛あ!!く、来んなよ…っ来んな!お前らみだいな男がいるから、
私達はっ……ぁ゛ああ!!!い、いだいいだいいだいいだい嫌だぁ!
商人
スィーラン様の供物だ。柔らかい肉と……あぁ、取り分は6:4だ。
女の子
足………
引きずられる。雑に切れた骨が見える。
女の子
私の…………足……
商人
あぁ、後の処理はお前に任せる。
これは1人が起こした、無差別殺人事件として_______
やめて。
人間
助けて゛……け、いさつ……誰か、



やめて。



人間
 ぉ゛ま えか  ぁ あ゛あぁ  ぁ あ





やめて。



























セツ
________________っ!?
銃声がした。



僅か3cm前。









ライナ
っ…はぁ、………セツ、お前……
ライナ
何してくれてんだよ……!








セツ
っ……ライナ……!

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