第26話

4番目らしいね
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2023/03/19 11:37
セツ
ッチ…………俺はお前苦手なんだよ…
ルイ
知ってる。伊達に4年一緒に住んでないよ
受け身からサッと立ち上がるセツ。

その視線は僕に注がれている。

ライナは今距離を取り、長距離狙撃銃を設置させているところだろう。
ライナはスナイパーだから。

構える。

セツがブンと横に蹴りを入れた。それを回避し、間合いに踏み込む。
腕に力を込め、拳をセツの頬へ振るった。
しかしセツは頭を揺らしただけで、あまり大きなダメージには至っていないらしかった。
ルイ
(耐久値も回避もセツが上…攻撃力は五分五分ってところかな)
腹にセツの靴裏が直撃する。その勢いは凄まじく、少し足がズレる。

しかしそれだけのステータスを持ってしても、セツはヒットアンドアウェイを崩さない。
ルイ
(……僕も苦手なんだよな…)
正直なところ。しかし溢してはならない。
僕が止めないといけない。
セツ
お前らは吸血鬼の何たるか、その本質を理解してないんだ
ルイ
へぇー、にわかが言ってもわかんないや
右拳を防がれる。しかしそのまま僕もセツの足をかけ、バランスの崩れたところを左腕で殴る。

お返しと言わんばかりにセツも腹に決めてくる。欲張りはしない。距離が出来る。
ルイ
あなたの下の名前の血も吸ったの?
僕は質問する。
セツ
…………あぁ。予想以上だった
ルイ
っ………へぇ、そう
あわよくば正気に…なんて思っていたがそんなに甘くないらしい。

………でもさっきの間はなんだろ?
激しい攻防。こっちはスピードも出して数も圧倒しているのに
セツはまだ倒れない、どころか余裕そうだ。僕の方もセツの方のも同じくらい攻撃したのに。
セツ
………っどうした、息切れてきてんぞ
ルイ
そんなことないよ…w君の目の方が幻覚見てるんじゃない?
目の前まで詰めた。
逃げ場の無い袋小路。

僕は振りかぶってその鼻を殴りつけた_________







ルイ
_______________あれっ………、
____________殴った感触と違和感。

確かに僕は殴った筈なのに、僕の右手は目の前の彼をすり抜けて_______
セツ
こっちだバーーカ







酷く尖ったもので背面を殴られた。





ルイ
(っ幻影か……!)
首下から痛みが全身をまわる。脊椎までいっちゃったかな……

いったいなぁ、その辺に落ちてた瓦礫かアスファルトかなぁ…
ルイ
おめでとう
ふらりと立ち上がった。

瞳に映るセツは距離を置いて警戒していた。
ルイ
幻影、殴った感じがしたよ。
こういうの目指してたんでしょ?よく出来てるね
ニコニコ笑う。


笑って、
ルイ
じゃぁプレゼントだね
僕はセツを吹き飛ばした。

また後を追う。
ルイ
(あ、ライナのこと考えてなかった)
着地したのは別の街だった。人間の避難は終えてくれている。
セツ
っ……いま、何が…
ルイ
別に衝撃の波で運んだだけ。わかるでしょ?第2ラウンド、本気でいこうよ
能力:波動

それは波であり、振動であり、エネルギーである。
セツ
っ……だから苦手なんだよ……!
ルイ
そんなこと言うならもう住まわせてあげませーん
僕は能力を使う。

空気を身に、心に浸し、まるで波に揺られているよう。
セツが幻影を出す。風景を変えぬまま、幻のセツと僕の座標を新たに作る。

本物は、動いていないまま。


波動とは何か。それは能力者の解釈次第。
………………………………………………残念だったね、セツ。
ルイ
君の波動は馬鹿正直だね
僕は本体に殴りかかった。

セツは受け止める。その拍子に幻影は揺らぐ。
セツ
っ………意味ねぇか…
この世の全ての物質からは“波動”というエネルギーが波のように発せられている。

対してセツの幻影は僕らの神経なんかに呼びかける代物。実体はない。

よってセツの波動を感じるままに。僕は動けばいい。




僕の能力は波動。媒質は空気。
自らを波源として回折と干渉をある程度操る。
ルイ
そういえばさ、2023年の模擬戦結果、出たらしいんだよね
声に乗せて。蹴り合いながら。
ルイ
セツ、4番目らしいね
セツ
何を……………っ、……





セツはバランスを崩した。

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