その腕の中には、護衛対象であるはずのあなたの下の名前。
彼女はただひたすらもがいていた。
申し訳なさそうな顔でこちらを見る。
・・・・・
どうして?どうして来ていない_______________?
雨音が0単位の速度で剣を振るった。
脳裏に浮かんだのは“やばい”の一言。
反応が
遅れた。
刹那、その声が響き渡る。
全員の動きが止まり、ナナの鼻からは血が垂れた。
革命児4人がそこに集っていた。
耳栓を外しながらハツが言う。
どっと溢れる安心感。
僕は心の内で笑みを溢した。
ナナの能力、”有言実行“は、聞いた者全員が対象者。その強さと便利さ故の代償か、
その命令が対象者の意に沿わなければ沿わない程自分の負荷が大きくなり、
相手にも効きにくくなる、という捨身能力だ。
雨音も僕もセツもあなたの下の名前も動けないでいる。
いや僕のは解いて。
2人がセツと雨音に枷をつける。
言われた瞬間に距離を取る。
本当にありがとう。
雨音は悔しそうに顔を歪めている。見下していたサードに一杯食わされて、怒り心頭に発しているのだろう。
セツが躊躇いがちに手を離そうとする。
ナナの出血の度合い、効きにくさを見るに、よほど離したくないのだろう。
いや、本命はこっちだったか?
あなたの下の名前がセツの手から離れる。
その瞬間、
枷を壊し、代償によりナナの鼓膜を破った少年が____________
_______________ライナの腹を突き破った。
瞬きをする間もない一瞬。
臨戦態勢に入った頃には、雨音は僕の前に立っていた。
気が付けば、背は壁面。
腹には白銀の鋭い刃。
ポタリ、ポトリと滴る血液。
あ れ ?
雨音の剣が腹を貫通し、僕は壁に磔にされていた。
悲痛な叫び。
人形のような青ざめた顔。
もがく意識の中で聞こえた最後の言葉。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。