ライナがそこにいた。
近接戦闘なんてからっきしの、ライナが。
セツと僕の間に割って入ったライナは、セツを睨んだまま放った。
柔らかな背中と鋭い気配。小銃を握る手は固い。
セツは構えながらライナを見つめる。
銃声が一つ。二つ、三つ。
反動の少ない小銃。フルオートによる広範囲の散弾。
ライナの足掻き。
セツには届かない。
その全ての銃弾を避け、セツはライナに近づく。
音が耳に入るよりも速くセツは蹴りを入れる_____________
_____________その前に
ドンッ と鈍い肉の音がした。
僕はにやりと笑って、セツの股関節を外した。
脚力と振動。力を”干渉“で強化。“回折”で力の方向をセツの後方へ。
動けないでしょ。
嘘つき。
セツは優しいから。
みんなに幸せな夢を見せようとしてたから。
痛みを知っているから。
セツの蹴りが入る。
胃を圧迫、気管も傷ついた。
嘔吐。血も混じっている。
ライナを牽制する。
僕らは構えた。
きっともう長くは動けないだろう。
地面を蹴って弾けた。
銃を握る手が痺れてきた。
……中々相性が悪いな。
投石。着々とスピードの上がっていくそれを粉砕する。
その隙を狙ったであろうハツとナナが時間差で攻撃を仕掛けてくる。
どちらかを防ぐとどちらかに当たる。そんな絶妙なタイミング。
ダメージを最小限に抑え僕は半歩距離をとった。
そのまま短く瞬発し、ナナ目掛けて突っ込む。
しかしそれをギリギリのところでハツに防がれてしまった。
視線とか前情報からして、全体を見て判断しているのはナナ。
捨身で間合いもクソもないデタラメな防御・耐久はハツ。
厄介だなぁ…
雨音が銃を鈍器のようにして頭を殴ってくる。
それもとてつもないスピードでだ。
それを俺は避ける。隙が出来た雨音の後方からハツの剣が振られる。
雨音は上空へ避けた。
息を少し切らしている。カルノとの戦いで体力が削られているんだろう。
すごい成果だよカルノ。
俺は雨音に言い返した。
俺も上空へと跳躍する。ハツも反対側へと回り逃げ道を塞ぐ。
雨音はハツの頭に小銃を振り落とす。そのスピードには追いつけず、落ちてしまう。
上空での戦いやすさ、経験の差だ。
集中する。相手を見ろ。惑わされるな。
雨音は俺の頸動脈を抉ろうと腕を伸ばした。
それを俺は掴む。
その腕……いや雨音の体に雹が降り注ぐ。
それも全方向から、直径30センチの巨大な塊。
当たっては回復、当たっては回復を繰り返す。
そこにハツが攻め入る。俺の判断通りの動き。雨音のダメージを深くする動き。
俺の方へ向かわせないような立ち回り。それはまるで盤上の駒のよう。
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俺は笑みを溢した。
壊しても壊しても振り続ける雹。それに乗じるハツを見ながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。