涼介を待つことかれこれ2時間は経過していて
教室からサッカー部の練習の風景を見ていた。
するとようやく片付けを始めているのに気づき
慌てて鞄を持ってグラウンドに駆けつけた。
涼介のところまで走っていきながら
事前に買っておいた飲み物を渡す。
ぷいっと逸らす涼介の横顔はなんだか
頬が赤くなっているように見えた。
下校中もふざけ合いながら会話が続き
私の家の前まで着いたところでふと、
ある事を思いだして涼介に問いかけた。
すると突然涼介の携帯が鳴り響いた。
話の途中で申し訳なさそうに顔の前で
ごめんと手で合図をしてから電話に出る。
なんだか嫌な予感がして落ち着けずに
いると私の嫌な予感が当たってしまった。
そう言って電話を切ると嬉しそうな顔で
こっちに向かってきた。
まさかこんな早くに東京の仕事が
決まるとは思ってなかったから
嬉しかったけど寂しさが溢れてきた。
でもここで私がわがままを言って
しまえば 涼介が困ってしまう...。
私は溢れだしそうな涙を堪え、笑顔を向けた。
これ以上涼介の顔を見ると泣いてしまう...
そう思いその場から逃げ去るように家に入った。
後ろから呼び止める声が聞こえたけど
振り返れず玄関の鍵を閉めて思いっきり泣いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。