あれから涼介とは会っていなくて、
突然決まった芸能界の仕事だったから
引越し先や退学届けの準備で忙しくて
学校にも来ていないみたいだ。
だから最近は1人で登校している。
一人での登校は初めてだったから、道中
やけに静かで隣に誰かがいないだけで
こんな孤独感漂うものなんだろうかと
寂しくて仕方がなかった。
ようやく学校に着き、教室のドアを開けると
大貴の姿があった。
大貴には 本当のことを 言おう。
大貴が落ち込むのも無理はない。
だってずっと仲良しだったもんね。
大貴と一緒にいる涼介は楽しそうで
いつも言い合ったりふざけあったりして。
そんな2人の姿を見るのが毎日楽しみで
2人のお陰で教室の雰囲気も明るかった。
大貴はなぜか怒ったような口調で
私に問いかけてきた。
痛いほど大貴の言葉が胸に刺さって
我慢していたものが一気に溢れ出した。
私がひとつひとつ話す言葉に
うんうんって頷きながら優しく
聞いてくれる大貴。
その時先生が教室に入ってきて
私達のところまで近づいてきた。
少し考えたけど気まずいまま
涼介とは会っていなかったから
会うのに抵抗があってなかなか
体が動こうとはしなかった。
そう言い残し先生は教室から出ていった。
まだ迷っている私に大貴はそっと声をかけた。
それでもまだ迷っているあなたの手を
大貴が掴んで職員室まで走り出した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。