第20話

暗闇の中で見えた光。
9,552
2020/02/05 10:20




ー竈門炭治郎sideー









俺があなたの家を離れてから2週間が経った。





2週間前のあの日、


突然あなたが焦りはじめて…


俺に気配を消して隠れろと言った。


言われた通り、


俺は気配を消して隠れた。


しかし、


禰豆子を隠しきれなかったのか…


俺と禰豆子は気付かれてしまった。


しかも俺達の所にやって来たのは……













柱の人達だった…。


驚いた。


その後ろにあなたも居た。


だが……


あなたは一言も言葉を発しなかった……。


そして俺と禰豆子は柱の人達に連れられてあの山を離れた……。


あの……


綺麗だった山から…………。














柱の人達に


あなたは来ないのかと問いかけたが……


柱の人達は何も言わず、


ただただ…


首を横に振った。


その時の表情は……


とても胸が痛くなるものだった…。


その時の匂いは……


とても、


柱の人達の後悔が痛い程に伝わってくるものだった…………。












そして今、


俺は禰豆子と善逸、伊之助


そして炎柱の煉獄さんと合同任務を行っている。


たった今、


下弦の壱を倒した所だ。


俺はもう怪我のせいで十分に動けない。


でも……


乗客の人達を守った…。


下弦の壱の頸を斬った……。


これで……


やっと終わりだ…。





俺は地面に転がった。





あなた、元気にしてるか……?


こんな時にあなたの事を思い出した理由は分からない……。


でも……


俺は今、


どうしようもないくらいに寂しい……。


あの咲き乱れた花を見られないのは……、


あなたの笑顔を見られないのは……


寂しいなぁ……。


煉獄杏寿郎
竈門少年、集中!!
この止血した状態を続けるんだ!
竈門炭治郎
はっ、はい!!




『ドォォォォォォォォォオオンンッッ!!!!』





煉獄杏寿郎
ピクッ!!
竈門炭治郎
え、……
猗窩座(上弦の参)
…………ニヤッ



なっ、……


なんだと…………?


上弦の……参…………?


な、んなんだ……、この、威圧、は、……!!


息が詰まる……


猗窩座(上弦の参)
お前、鬼になれ。ニヤッ
煉獄杏寿郎
……なる訳が無い。



それからの戦いは……


目で追うので精一杯だった……。


いや、追えていたのかもわからない……。


とにかく煉獄さんの手助けをしたかったけど……


出来ない。


無理だ。


まず俺は……


あの空間に入れない…………。


誰か……


煉獄さんの手助けを出来る人は……





竈門炭治郎
……ッ!???!!!!
竈門炭治郎
煉獄さんっ!!!!!
煉獄杏寿郎
かッ……は……ッ……!!









煉獄さんの片目が……


今、


目の前で…失われた……。



恐らく、



内蔵も損傷を受けている……。



でも煉獄さんは…



諦めるはずがなくて、



それどころか…



自分の責務を全うすると…



ここに居る全員を、



自分一人で守ってみせると…



そう、上弦の参に言い放った…。



ああ…



辞めてくれ……。



どうか…



煉獄さんを殺さないでくれ……。



殺すなら、俺を殺してくれ……。



その人は……



煉獄さんは……



生きるべき人なんだ…。



強く、優しい人なんだ……。



他人の為に戦える、



とてもいい人なんだ……。



そんな人を…



目の前で失う訳にはいかないんだ…。



どうしてだ……、



どうして…



俺の足は動かないんだ……。



何とかして止めたい。
















こんなにも……



"後悔の匂い"をさせている煉獄さんを、



俺は目の前で……



失いたくない…。



せめて……



"その後悔"を、



煉獄さんから取り除きたいんだ…。








煉獄さんは……



2週間のあの日から、



ずっと…後悔していたんだ……。



あなたに…まだちゃんと……



"謝罪"が出来ていない事を……。



こんなにも後悔している人を…、



こんなにも自分を責めている人を…



後悔させたまま…



自分を攻め続けたまま…



死なせるだなんて、



俺が……



この俺が……



絶対に…



許せない……。



俺にもっと…



力があれば……。



俺がもっと、強かったら……、



煉獄さんを今すぐ救えたのに……。



俺は……



弱すぎるんだ。

















誰か……



煉獄さんを……



"助けて……"




煉獄さんを死なせては…



駄目なんだ……。

















煉獄杏寿郎
奥義……玖の型 煉獄
猗窩座(上弦の参)
破壊殺 滅式


『ドォォォォォォォォォオオンン!!!』








止まった?



土煙で見えない…



煉獄さん



煉獄さん!!



嘴平伊之助
お、おい……
なんか、光らなかったか……?
竈門炭治郎
!?!!!
そういえば……
煉獄さんと上弦の参の丁度中間の辺りが光ったような……
でも…気配は感じない……。
姿も見当たらな…………ッ!???!!!!


































??
遅くなってすみません……
"煉獄さん"















俺は……



この光を、



知っている。








































"暗闇の中で見えた光"




それは……




人々を優しく包み込む……。




絶望を抱いていた人でさえも……。

































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