ー竈門炭治郎sideー
俺は……
この光を……
知っている。
記憶に残る…
あの、眩い光。
一度見たら忘れられる訳が無い。
ああ、
来てくれたんだな……
"あなた"。
俺は何処かで…
ひそかに思ってしまっていたのかもしれない……。
あなたが、
助けに来てくれると……。
盲信していたのかもしれない……。
でも……
やっぱり、
君は現れた…。
君に謝罪出来ていない事を…
ずっと後悔していた煉獄さんを救った…。
君はきっと、
謝罪など必要ないと言って…
感謝も必要ないと言って…、
煉獄さんや俺達を残してまたきっと、
あの"美しい山"に戻るんだろう…?
それでも君は…
煉獄さんを救いに来た。
きっと、
いつもみたいに…
今回もかっこよく守ってみせるのだろう……?
でも…あなた、
そうやって……
何度も何度も君の凄さを目にする度に……
俺達は君が必要になる。
君と一緒に居たくなる。
…君に、
鬼殺隊に戻ってきて欲しいと…
強く、
願ってしまう……。
なぁ、あなた。
"その眩い光"は…
誰を照らしているんだ……?
『ドドドドドォォォォォオオンン!!!!!』
何故か、
さっき煉獄さんと戦っていた時よりも…
猗窩座の技の威力が下がった気がした……。
何故だろうか……?
しかし…、
威力が下がったとはいえ……
普通にくらえば死に至る。
あなた、気のせいだろうか……。
今、君は……
今の攻撃を………
避けていないように見えた……。
『……ザンッ…!!』
さっきの…
瞬き一つの間に……
猗窩座の四肢は切断され、…
猗窩座は理解が追いついていない様子だった……。
もうすぐ夜明けだ……。
ああ…
行ってしまう……。
あなたが…行ってしまう……。
行くなと言っても…
きっと、
君は行ってしまうから……
俺には……
そんな君を止める力が無いから……
君は…
行ってしまうのだろう……?
久しぶりに会ったからこそ……
あなたの屋敷に帰りたいと…
強く、願ってしまう……。
あの美しく咲き乱れる花の下で……
美しく、
花に劣らぬ美しさで笑う君を…
もう一度だけ、
傍で見ていたい……。
そんな俺の願いも……
きっと儚く散ってしまうのだろうけど……
そう思わずには居られないんだ……。
行かないでくれ、あなた。
君が一人で鬼を狩り続ける姿を想像すると…
何故か、
涙がでそうになる。
その姿があまりにも美しくて……
その背中が……
あまりにも悲しげだから……。
、
、
"記憶に残る、眩い光"。
それは……
あまりにも美しく、
あまりにも……
悲しげであった。
その背中、
呼び止める声は…………
ひどく優しいものであろう。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。