第21話

記憶に残る、眩い光。
9,575
2020/02/08 05:55



ー竈門炭治郎sideー







俺は……



この光を……



知っている。










記憶に残る…



あの、まばゆい光。



一度見たら忘れられる訳が無い。



ああ、









来てくれたんだな……































"あなた"。



常闇 あなた
遅くなってすみません、
"煉獄さん"
煉獄杏寿郎
!?!!!
常闇……なの、か……?
猗窩座(上弦の参)
!?!!!
(何なんだ……この女は……!!
コイツ……気配がしなかった……。
この上弦の参である俺ですら気付けなかった……。
しかもコイツ……
俺と杏寿郎の間に入って…、
杏寿郎のあの素晴らしい剣技を避けながら…
俺の滅式を全て剣でさばいた……。
この女……只者じゃない…。
恐らく……
今まで俺が戦った奴の中で……
一番……"強い"。)




俺は何処かで…



ひそかに思ってしまっていたのかもしれない……。



あなたが、



助けに来てくれると……。



盲信していたのかもしれない……。



でも……



やっぱり、



君は現れた…。



君に謝罪出来ていない事を…



ずっと後悔していた煉獄さんを救った…。











君はきっと、



謝罪など必要ないと言って…



感謝も必要ないと言って…、



煉獄さんや俺達を残してまたきっと、



あの"美しい山"に戻るんだろう…?
















それでも君は…



煉獄さんを救いに来た。









きっと、



いつもみたいに…



今回もかっこよく守ってみせるのだろう……?






















でも…あなた、



そうやって……



何度も何度も君の凄さを目にする度に……



俺達は君が必要になる。



君と一緒に居たくなる。



…君に、



鬼殺隊に戻ってきて欲しいと…



強く、



願ってしまう……。



























なぁ、あなた。







"その眩い光"は…



誰を照らしているんだ……?













煉獄杏寿郎
常闇……
常闇 あなた
煉獄さん、下がってください。
煉獄杏寿郎
だが、
常闇 あなた
その怪我…
もう取り返しがつかないんですよ……?
煉獄杏寿郎
……
常闇 あなた
目だけじゃないです。
内臓も……とても傷ついている状態です……。
猗窩座(上弦の参)
!?!!!
もしやお前…、見えるのか……!?
常闇 あなた
………はい。
見えてますよ、"生まれた時から……ずっと"。
猗窩座(上弦の参)
素晴らしいな……!
お前、鬼になれ!!
きっとあの方も喜ぶぞ!!
常闇 あなた
……なる訳が無い。
そもそも私は、
………お前達鬼を斬る為に剣を振るっている。
常闇 あなた
…炭治郎、煉獄さんを頼んだ。
竈門炭治郎
…あ、ああ!
煉獄さん!大丈夫ですか!?
横になってください!!
煉獄杏寿郎
すっ、すまないな……
竈門少年…。
猗窩座(上弦の参)
……鬼にならないのか…?
猗窩座(上弦の参)
お前も杏寿郎も…
理解し難いな……。
猗窩座(上弦の参)
まぁ、いい。
俺が相手をする……
そして……、
お前に勝ち、お前を鬼にする…。
常闇 あなた
…………
猗窩座(上弦の参)
術式展開
常闇 あなた
………
猗窩座(上弦の参)
…!?!!
猗窩座(上弦の参)
(俺の羅針が……反応しない……!?
ばっ、馬鹿な…!!
闘気が無いだと……?!
この強さで闘気が無いなど…有り得ない……!!
この感覚……
別のものが目の前に居るみたいだ……。
コイツの周りの空気が異様に静かだ……。
やはりコイツ……何かが違う……。)
猗窩座(上弦の参)
……お前、やはり只者じゃないな…?
お前は何者だ……?
この道を何年磨いた?
どれだけ磨けばそれ程までに極める事ができる……?
常闇 あなた
……初めて刀を握ったのは半年前…。
猗窩座(上弦の参)
半年、だと……?
猗窩座(上弦の参)
いいな!お前!!
やはり鬼になれ!!
猗窩座(上弦の参)
破壊殺 滅式



『ドドドドドォォォォォオオンン!!!!!』





竈門炭治郎
!?……っ…!!
あなた!!!



何故か、



さっき煉獄さんと戦っていた時よりも…



猗窩座の技の威力が下がった気がした……。


何故だろうか……?

















しかし…、



威力が下がったとはいえ……



普通にくらえば死に至る。


















あなた、気のせいだろうか……。



今、君は……



今の攻撃を………















避けていないように見えた……。






猗窩座(上弦の参)
(威力が下がったとはいえ、人間ならば当たれば即死…。
アイツは……避けていなかった。
さっきのような光も見えなかった。
さばききれてないだろうな…。
さて、鬼にして連れ帰……)
!?!?!!!
常闇 あなた
『神の呼吸 常中・特』
猗窩座(上弦の参)
な……っ!?!!
常闇 あなた
……私の間合いに入った攻撃は全て無効化される。
あなたの攻撃は……私には届かない。
猗窩座(上弦の参)
(くそっ……!!
夜明けがくる…!!
今すぐ日陰に……)
常闇 あなた
「神の呼吸 伍の型 燦爛光芒」



『……ザンッ…!!』



竈門炭治郎
(音が遅れて聞こえた……?
いや、……あなたの斬撃が………速すぎるだけだ……。)
煉獄杏寿郎
…………
猗窩座(上弦の参)
グァッ……!!



さっきの…



瞬き一つの間に……



猗窩座の四肢は切断され、…



猗窩座は理解が追いついていない様子だった……。



もうすぐ夜明けだ……。




猗窩座(上弦の参)
再生するのが遅すぎる……!!
何をした……お前……!!
常闇 あなた
……私の刀で斬られると、再生が遅れる…。
猗窩座(上弦の参)
クッ、クソ……ッ!!
このままだと日光で俺は……!!
常闇 あなた
ガッッッッ!!!!!
猗窩座(上弦の参)
ガハ………ッッ!!!
嘴平伊之助
!?!!!
おいおい!!
森のほうにあの鬼蹴り飛ばしたぞ!?!!!
常闇 あなた
……もう、大丈夫ですよ。
煉獄杏寿郎
……助かった。ありがとう、常闇…。
常闇 あなた
もうあの鬼とは少なくとも…2ヶ月は会わないでしょう……。
…………では。
煉獄杏寿郎
まっ!待ってくれっっ!!!
常闇 あなた
?………
煉獄杏寿郎
……どうして君は…
俺を助けたんだ……?
常闇 あなた
……
煉獄杏寿郎
俺は……
月詠の嘘に騙され、
それを嘘だと気付けず…
常闇を傷付けた……。
煉獄杏寿郎
許されざる行為だ……。
なのに何故君は…
俺を助けに来た……?
常闇 あなた
……言いましたよね、誰も悪くないと。
煉獄杏寿郎
!?……
常闇 あなた
困っている人を助けるのは…
当たり前の事かと。
煉獄杏寿郎
……本当にすまなかった。
謝っても…君は、
謝罪は必要ないと言うだろうが…
でも、謝りたい…。
柱一同…、君にした事を心から後悔している……。
本当に…!すまない!!
常闇 あなた
…………
常闇 あなた
……顔を上げてください…。
後悔なんて、してもいいことはありません……。
どうか、後悔なさらぬよう……
そう、柱の方々にお伝え下さい…。
常闇 あなた
…………お館様にも…よろしくお伝え下さい。



ああ…



行ってしまう……。



あなたが…行ってしまう……。



行くなと言っても…



きっと、



君は行ってしまうから……



俺には……



そんな君を止める力が無いから……



君は…



行ってしまうのだろう……?





久しぶりに会ったからこそ……



あなたの屋敷に帰りたいと…



強く、願ってしまう……。



あの美しく咲き乱れる花の下で……



美しく、



花に劣らぬ美しさで笑う君を…



もう一度だけ、



傍で見ていたい……。



そんな俺の願いも……



きっと儚く散ってしまうのだろうけど……



そう思わずには居られないんだ……。





























行かないでくれ、あなた。



君が一人で鬼を狩り続ける姿を想像すると…



何故か、



涙がでそうになる。



その姿があまりにも美しくて……



その背中が……



あまりにも悲しげだから……。





















































???
久しぶりだね、あなた。
ありがとう…杏寿郎を助けてくれて…。
常闇 あなた
!?!!!


































"記憶に残る、眩い光"。



それは……



あまりにも美しく、



あまりにも……



悲しげであった。

















その背中、



呼び止める声は…………












ひどく優しいものであろう。













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