第26話

雲ひとつない、快晴。
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2020/02/15 07:52






―あなたside―
















私には



すべき事があるのだと



気づいた今、



私が向かう場所はただ一つ。






常闇 あなた
義勇さん、
蝶屋敷まで私を……
"案内して下さい"
冨岡義勇
……ああ



柱である以上、



義勇さんにはやる事が沢山あって



きっと忙しいはずだ。







それでも義勇さんは、



私からの頼みを



快諾してくれた。



とても……



凄く…いい人。



心が綺麗な人。



嘘にまみれていた時、



唯一、私を信じてくれていた人……。









本当にありがとう、



義勇さん。









私はあなたを……







大切にする。








あなたを……














"あなた達"を……

















『守り抜いてみせるから』














...





蝶屋敷に向かう道中、




不思議と




今までの事が




頭のなかで甦る。




辛かった事も、




嬉しかった事も…




"此処"に行きつくまでの事全てが…




甦る。









産まれた時から、




私は"一族の力"を




歴代の常闇家当主よりも




とても強く持って生まれた。




初代常闇家当主…




"神の呼吸の使い手"と並ぶ程に。




それでも父は……




私に何も言わなかった。





私に…




「あなたは普通の子だ。




少し体が強いだけで、




父さんと何も変わらないんだよ。」




と、




私が異変を感じるたびに言ってくれた。






でもその異変は…




気のせいなんかじゃなくて、




その異変が無くなった頃には……




私は"神の呼吸の使い手"となっていた。




天に選ばれし剣士、




神の呼吸を使用できる人間となっていたのだ。




それに気付いたのは…




父さんが死んで……




父さんの机の引き出しから、




"あの書"を見つけたときだった…。




それを知ったとき……




とてつもない疎外感と、




孤独に包まれた…。




私は…




普通の人のように……




生きることはできないのだと、




そう、思った。




そう思ったら……




全てがどうでもよくなって、




誰から




何を言われようと、




傷つく事は無かった。




どうでもよかった。




利用されようが、




罵倒されようが、




殴られようが、




何をされようが…




どうでもよかった。




でもそんな時……




"あの書"を読んで、




神の呼吸の"最後の型"について知った。




嬉しかった。




"正しい死"を迎えられる事が…




嬉しかった。
















でも……




だんだんと気づいてしまった。




私が死を迎えることが嬉しいと思ったのは…




本当は…………




"苦しい"からなんだって事に、




気づいてしまった。
















その後に、




炭治郎と会って……




私が今まで言って欲しかった言葉を、




沢山掛けてくれた…。




嬉しかった。










その後…




月詠麗奈の本性が暴かれて、




月詠麗奈は最後の任務に向かわされた。




おそらく、




あの女は鬼に喰われて死んだだろう…。




そしてお館様は…




私に柱にならないか、と




言ってくださった。




お館様のご厚意を




無駄にはできないと思った。




柱になりたいと思った。




でも……




日に日に輝きが強まる、




私の金の日輪刀が……










私を呼び止めた。




大切なものを失う苦しみを……




もう二度と味わいたく無かった。




柱になったら…




きっと私は……




大切にしてしまう。




そんな苦しみ……




もう二度と御免だ。




味わいたくない。




だから私は……




その苦しみから逃げたくて、




その刀身を磨き続けたのだと…




私は確信した。




私は"此処"を離れた。













でも離れていた私の元に




炭治郎が来た。




正直、




辛かった。




楽し過ぎて…




辛かった。




一度楽しさを知ってしまって、




離れがたくなって……




辛かった。









そして私の元に、




柱の人達が来た。




苦しかった。




「戻ってこい」




その言葉に、




「うん」




とでも誤って返してしまいそうだった。























そして今日、




お館様と…




義勇さんのお陰で、




私は気づく事ができた。














私が守りたいのは…











私が守り抜きたい人達は……















全て、







"此処"にある。











"この刀"を完成させたから…




もう、





後戻りはできない。







するつもりもない。










せめて私が…





"使命を果たすとき"が来るまで、






















大切にしたい。



























私は……
























"此処"に居たい。

























胡蝶しのぶ
待ってました……















































.
胡蝶しのぶ
あなたさん















太陽は…




己が照らしたい場所に辿り着いた。




"此処"に……




辿り着いたのだった。











今日は……




"雲ひとつない、快晴"










おそらく"此処"は……
















晴れ続けるだろう。
































太陽が消える、そのときまで…










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