第34話

刹那の時間。
5,986
2020/05/09 02:00




ー常闇 あなたsideー




窓から差し込む陽光に包まれ、目を覚ます。




常闇 あなた
……ここで目を覚ますのも…あと二週間か、



つい、そんな言葉が零れ落ちる。





昨日、産屋敷邸でお館様と話した事を思い出す。




___ああ、あと二週間か。





まだ実感が湧かない今、頭にあるのはその言葉だけ。



二週間、何をしようか。





誰と過ごして、






何を話そうか。








考えてみるが、何も浮かばない。







覚悟はしていたが、いざあと二週間と言われても、実感が湧かない。




頭が追いつかない。






……いや、





考えたく無いのかもしれない。








___置いていかれる側の気持ちは、知ってる。








苦しくて、









辛くて、









耐えられない。











………でも、











此処にいるからには、それなりの覚悟が必要で











それなりの覚悟をしている筈だ。












諸悪の根源たる鬼舞辻無惨を討てるのならば……










皆が__













鬼のいない平和な世界で笑いあって暮らせるのならば……















この命、













喜んで差し出そう。










私は身支度を整え、胡蝶さんの部屋へと向かった。











コンコンッ







ドアをノックし、声を掛ける。
常闇 あなた
胡蝶さん、あなたです。
入ってもよろしいですか?
胡蝶しのぶ
ええ、いいですよ。
常闇 あなた
失礼します



扉を開け、静かに閉める。



胡蝶しのぶ
どうぞそちらに座って下さい
常闇 あなた
ありがとうございます


胡蝶さんと向かい合うように椅子に座り、真っ直ぐ前を見る。


胡蝶しのぶ
それであなたさん、どうかしましたか?



私はお館様から昨日聞いた事を胡蝶さんに問いかける。



常闇 あなた
昨日、お館様から聞いたのですが…協力者である鬼と薬の研究をしていると。
胡蝶しのぶ
ええ、そうですよ。
禰豆子さんに使用する鬼を人間に戻す薬や、鬼に効く薬品などの研究をしています。
常闇 あなた
……実はですね、今はもういませんが…私の父は薬師だったんです
常闇 あなた
それで……父も研究していたんです
常闇 あなた
鬼を……人間に戻す薬を、
胡蝶しのぶ
!!
常闇 あなた
一応、と思いまして……
父の研究記録をまとめたものを持って来ました。
参考として役にたてて下さい。


そう言い、三冊の書を胡蝶さんに渡す。


胡蝶さんは不思議そうな顔で受け取り、中身をパラパラとめくって見ていく。




すると、めくる手を止め、胡蝶さんは目を見開き、驚きをあらわにした。



胡蝶しのぶ
こ、これは……ッ!
胡蝶しのぶ
殆ど完成してますよ…!!
常闇 あなた
胡蝶しのぶ
ありがとうございます、あなたさん!!
これならあと数日で完成させられます!!
常闇 あなた
そうですか…!
お役に立てたのならよかったです。
胡蝶しのぶ
この書、しばらく借りてもいいですか!?
他の研究の事も色々書いてあって…!
常闇 あなた
勿論、良いですよ。
胡蝶しのぶ
ありがとうございます!!




そう言って胡蝶さんは無邪気に笑った。



いつもの艶やかな笑みでは無く、



年相応な、無邪気な笑顔。




まるで、楽しい遊びを見つけた子供の様な笑顔。








それにつられて私も笑った。







では失礼しますね。とひと声掛け、胡蝶さんの部屋を後にした。








さて、次は何処に行こうか。





そんなことをぼんやりと考えながら、何やら騒がしい縁側の方へと歩を進めた。






我妻善逸
ちょっ、伊之助!!
それ俺の饅頭!!
嘴平伊之助
あ?
俺の前にあったんだから俺のだろ。
我妻善逸
なにその思考回路!!
お前は野生の伊之助か!!
竈門炭治郎
辞めるんだ二人共!
それに野生の伊之助ってなんだ善逸!!
我妻善逸
そのままの意味だよ!
ああ!!俺の饅頭がッ!!
竈門炭治郎
善逸、ほら、俺の饅頭をあげるから静かにするんだ。
我妻善逸
それは炭治郎のでしょ!
炭治郎が食べなきゃ駄目!!
嘴平伊之助
なんだ権八郎!!
饅頭要らねぇなら俺が食うぞ!!
我妻善逸
食うなッ!!
お前は遠慮というものを覚えろッ!!
常闇 あなた
善逸くん、大丈夫…?


三人で言い争って、
必死に善逸くんが伊之助くんに怒ってる姿がどこか微笑ましくて、
つい声を掛けてしまう。


我妻善逸
えッ!?!!!!!
竈門炭治郎
!?!!
嘴平伊之助
!!!!
常闇 あなた
あ、ごめん…驚かせた、かな?
我妻善逸
心臓が出てきたかと思うくらい驚いたよ!!!
音を消して来られたらそりゃあねぇ!!
竈門炭治郎
あなた…!!
嘴平伊之助
お前!ピカ子じゃねぇか!!
常闇 あなた
あなただよ、伊之助くん。
常闇 あなた
音と匂いは消したつもりは無かったけど…ごめんね、驚かせちゃった。
我妻善逸
全然いいよ!!
それよりあなたちゃんは今日も綺麗だね!!
うん!!!
これはもう結婚するしかないね!!
常闇 あなた
結婚は……ごめんね、まだ良くわからないや
我妻善逸
そういう所も可愛いよ!!
竈門炭治郎
やめろ善逸!!
みっともないぞ!!!
我妻善逸
酷ッ!!
嘴平伊之助
おい!ピカ子!!
今日こそ勝負しろ!!
常闇 あなた
伊之助くん、それで庭の柵を壊して胡蝶さんに怒られたのはいつだったっけ?
嘴平伊之助
……きょっ、今日のところは見逃してやる…!!
常闇 あなた
ありがとう、
我妻善逸
だいたい俺達なんかあなたちゃんにかかれば瞬殺だからな、伊之助。
嘴平伊之助
はァ!?ンだと!!
そんなのやってみねぇとわかんねぇだろ!!
竈門炭治郎
二人共!静かにしないか!!
しのぶさんにまた怒られたいのか!?
嘴平伊之助
はァ!?
常闇 あなた
あ、胡蝶さん
嘴平伊之助
ヒッ…!!
常闇 あなた
ごめん、見間違いだった
我妻善逸
なんだよぉぉぉおお!!
嘴平伊之助
おいピカ子!!
心臓止まるかと思ったじゃねぇか!!
常闇 あなた
ごめん、ごめん





この三人と居ると、自然と笑みが零れてくる。





蝶屋敷に来てから、
炭治郎経由で善逸と伊之助くんとも仲良くなり、

今では敬語も無しで、

名前を呼びあって、

冗談を言い合い、

笑い合える仲になった。

























___なったのにな…

















楽しくて……













幸せなときは、













いつも……














一瞬だ。














ほら、今だって。














気が付いたら昼頃になっている。




















幸せなときが流れるのは……

















あまりにも速いなぁ…。


















覚悟は…………










もう、とっくの昔に…












してた筈なのにな……。
















今更になって…
















急にこの世界が恋しくなるのは……




















何故だろうか。



















きっと、















残りの二週間は……














とても短くて、














幸せで、
















長いときとなるだろう。


















私は…………













あと、二週間…
















___刹那のときを過ごすのだ。













...









___刹那の時間。










とても短くて、

















幸せで…























長いとき。


















彼女は残りの二週間を……

















刹那の時間を…





















生きるのだ。



















___悔いの残らないように、



















___重い運命を背負って。







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