第31話

これが彼女の生きる道
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2020/03/28 07:25



ー産屋敷耀哉sideー





産屋敷邸にて、これからの運命を左右する話し合いが行われる。

その場にいる者は、この屋敷の主である鬼殺隊当主・産屋敷耀哉と……

常闇あなたであった。






産屋敷耀哉
今日はよく来てくれたね、あなた
常闇 あなた
…お館様と話すのは煉獄さんを助けた日以来でしょうか…?
産屋敷耀哉
うん、そうだね。
今日は……君と話がしたくてね。
常闇 あなた
……話、ですか……?
私のことについてなら以前話したときに話せることは全て話ましたが……?
産屋敷耀哉
…今日あなたと話したかった事は……
君のこれからのことについて。
常闇 あなた
……私の…これから……
産屋敷耀哉
…あなた、君を……
『神柱』に任命したい。
常闇 あなた
私を柱に……?
産屋敷耀哉
以前言った事があったと思うけど……真剣にお願いしたい。
我々鬼殺隊にあなたが居てくれることになり、
柱の皆とも話し合いを済ませたいま、
これからは互いに協力して力を合わせるときなんだ。
常闇 あなた
……承知しておりますが、……
産屋敷耀哉
……言ってごらん?
常闇 あなた
…失礼ながら、私が柱として名を残して良いものなのか……
産屋敷耀哉
…どうしてそう思うのかな……?
常闇 あなた
……一度鬼殺隊を抜けた身で柱になるなど……身が引けます。
それに私は……
産屋敷耀哉
……?
常闇 あなた
……いえ、何でも…
産屋敷耀哉
……そうかい、
あなたの言いたいことはわかった。
……あなたは、そう言うと思っていたよ。
だから今日は君ときちんと話がしたくてね、柱達は呼んで居ないんだ。
常闇 あなた
…なるほど……
産屋敷耀哉
…私の話も、聞いてくれるかな…?
常闇 あなた
もちろん…お聞き致します。
産屋敷耀哉
……実は、産屋敷家に代々伝わる詠があるんだ。
常闇 あなた
詠……?
産屋敷耀哉
…『終焉の詠』と言ってね……
平安の頃、腕のいい占い師が産屋敷家の遠い未来を占ったときに、予言として残した詠なんだ。
常闇 あなた
平安の頃………
産屋敷耀哉
……『赫灼の日と深紅の月が二つ満ちる時、歯車は動き出す。導くものは……黄金の月華。黄金の月華が微笑みし方、長き連鎖は断ち切られる。因果が巡るは…深紅の月』
常闇 あなた
………"黄金の月華"…
産屋敷耀哉
……何か、わかることはあるかい…?
常闇 あなた
……いえ、特には…
産屋敷耀哉
そうかい……
常闇 あなた
…でも、
………ひとつ、父が満月を見上げて口癖のように言っていた言葉があって…
産屋敷耀哉
…どんな言葉だった……?
常闇 あなた
……『月の華、儚く脆く…美しく……
一度きりの満開を迎えし頃……
真紅の月の終焉に散りし華…』
産屋敷耀哉
……やはり、この詠はあなたの家と関係があったんだね。
常闇 あなた
………
産屋敷耀哉
私は……君が『黄金の月華』だと思っている。
常闇 あなた
!?……
産屋敷耀哉
……あなたが我々には、必要不可欠なんだ。
そして……命を賭け、全力で戦う姿は皆同じ。
産屋敷耀哉
だからあなた……
産屋敷耀哉
『神柱』に、就任してはくれないか……?
常闇 あなた
……私は…以前お館様に言った通り、命を賭けて戦います。
常闇 あなた
……それに、"私の最後"はもう決まっています…。
常闇 あなた
誰にも止めることはできない……
常闇 あなた
私は最後まで、刀を振るいます。
剣士として…
神の呼吸の使い手として、生きます。
常闇 あなた
最後の、最後まで……
産屋敷耀哉
……うん…
常闇 あなた
……『神柱』就任の命、承りました。
謹んで、お受けします。
産屋敷耀哉
……ありがとう、あなた。
常闇 あなた
……最後まで、『神柱』として戦い抜くことを誓います。


役者は出揃った。

『赫灼の日』も

『深紅の月』も

『黄金の月華』も……

"全て"揃った。

我々の悲願が果たされるときは遠くない。












……だが恐らく、"代償"は大きい。









『月の華』は散ってしまう……。


その……

美しく、

儚く…

脆い

月の華は……












散ることを選んだ。







自らの意思で、被害を最小にとどめるために……。








なんとかしてそれを止める術はないのだろうか……。









早く見つけ、引き止めなければ……












月の華の"未練"をつくらなければ……













急がなければ……


















君の背に、手が届くうちに……。

























今宵、新たな月が誕生した。







いや、









"ずっと前からあった"『真の月』が今宵、輝き始めた。










月は、太陽が照らさないと光らない。











月光は、太陽から"与えられた分が多ければ多いほど"



強く、



眩く



輝く。


















太陽は、歩みを速めた。









_____に向かって……。












もう、振り返らない……。




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